ご注意
まずこれをお読みの皆様にお願いですが、現在医療機関で治療を受けられている方は、必ずかかりつけの医者に相談の上お試しください。また、自己診断は禁物です。まず医療機関の診断を受けた上でご自分の体調を正しく把握してください。
 コレステロールの問題は朝鮮戦争で戦死した軍人の研究のために1951年にペンタゴンが朝鮮に送った病理学者の行った研究から始まりました。病理学者がおよそ2,000人の戦死した兵士を検死解剖した時のことです。兵士たちの平均年齢が21歳とあって、冠状動脈系の心臓病で死んだ兵士はほとんどいなかったのですが、75%の兵士が動脈壁にアテローム性プラーク(アテローム=太い動脈の内膜下にできる斑点状の肥厚で、血流を妨げるおそれがある)の黄色い蓄積物があったというのです。それらの動脈の詰まらせるプラークは高齢者だけのものと考えられていたのです。この朝鮮での病理解剖以前には、医学界では心臓病の進行の始まりがいつなのかは実際のところ不明だったのです。その後少しして、血液中のワックス状の物質、つまりコレステロールがプラークとなって心臓病のリスクを積み上げていく主な原因として見極められました。最近になって、科学者たちはコレステロールの血中レベルを1パーセント落とすことは、心臓発作のリスクを2パーセントも低くする効果があることを発見したのです。
数字を理解すること

 平均的なアメリカ人の総コレステロール量は血液1デシリットルに200ミリグラム(200mg/dl)より高いのです。この数字以上になると心臓発作のリスクが急激に高くなるという理由で、米国心臓病協会(AHA)は国民すべてにコレステロールの値を測定してどの程度のコレステロール値かを知り、その値をさげる努力をするように強く勧めています。
 200からどれくらい低い値か、あなたの心臓病のリスクがどれくらい低いかを知るべきではないですか?これでも完全に解決するわけではなく、研究で明らかになってきていることはコレステロール値が150より低くても、たとえば肝臓ガン、肺疾患や各種の心臓発作を含むその他の原因で死へのリスクは上昇していくのです。私の印象では、コレステロールの値は170から190の範囲にしておくように保つことが良いと思っています。
 事態をより複雑にすることがあって、コレステロールには2種類あって、心臓発作のリスクを増加させる低比重リポ蛋白(LDL)と逆にリスクを低下させる高比重リポ蛋白(HDL)と呼ばれているのです。もしあなたのコレステロール値が高ければ、あなたのホームドクターはLDLレベルに注目してこれを低く押さえように治療することになるでしょう、つまりこの悪玉コレステロールは心臓病へと直接リンクしているからなのです。
 推定ですが米国人の25%の人々が心臓発作が起きてもおかしくないくらい高いコレステロール・レベルで、また10%の人々のコレステロール・レベルは医者が即座に抗コレステロールのための薬物治療の処方箋をつくるほどなのです。しかし、医者はほかの方法、つまり「緑の薬局」的な方法で心臓病のリスクを減らすことを患者さんに消極的なんです。
繊維パワー

 おそらくすべての植物に含まれる繊維質は人間のコレステロールを低く押さえることができるでしょう。その意味は、フルーツ類や野菜それに全粒穀物といった脂肪分が少ない食事をとることなのです。
  ある研究で、研究用ハムスターの餌の一日摂取カロリーの5%を高繊維栄養剤(商標名「ファイバーセル」)を加えた実験を行ったときのこと。ファイバーセルは全コレステロールの量を42%、悪玉コレステロールLDLを69%低下させていました。善玉コレステロールはなんと16%増加したのです。
 カラスムギの糠(ぬか)はコレステロールを落とすと一般に宣伝され、知られるようになりましたが、これも高繊維食品の一つにしか過ぎません。果物、野菜、穀粒はすべて同じ効果があるのです。実際、カラスムギの糠はコレステロールを落とす最良の繊維食品からは遠く及ばないのです。ハムスターの餌に同じように5%のカラスムギの糠を混ぜて与えたところ、全コレステロールの量、悪玉コレステロールLDLの量をそれぞれ19と29%しか低下させませんでした。そもそもカラスムギの糠のコレステロールを落とす構成成分はベータ・グルカンなのです。
 大麦にはベータ・グルカンがカラスムギの3倍も含まれているし、大豆類も非常に大量の供給源なのです。必ずしも薬に頼る必要はないということも知っておきたいところです。コレステロール値を下げる効果のあるハーブや食べ物は豊富にあるのです。
高コレステロールのための緑の薬局

 私たちが食べる食材から十分な繊維質を摂ることに加えて、大変に有効なハーブや食材があります。
"★"の数は効果の高さの指標です。
★★★ ニンジン(Carrot /Daucus carota)ペクチンを含むその他の食材
 スコットランドの研究所では3週間以上の間、毎日ニンジン2本分のスナックを食べさせた参加者のコレステロールの値を10~20%低下させたことを実証しました。
 ニンジンには繊維質ペクチンの含有度が高いのです。ペクチンの供給源として良いものにはリンゴと柑橘系の外皮の白い部分があります。(そうです、オレンジやミカンなどを食べるときには白い部分も少しばかりかじってください。)
 私にはジュースの本当の価値がわかるので、少々アドバイスしたくなりました。フルーツや野菜を飲み物の形で摂ることは大変良いことです。でももしもジュースに含まれるペクチンを無駄なく利用したければジューサーは使わない方がよいでしょう。代わりにミキサーを使うのがよいです。ジューサーを使うと、繊維成分のほとんどが除かれてしまうし、おまけにコレステロールを押さえるペクチンが10%しか残らないのです。
 補助栄養食品をつかうこともできます。フロリダ大学の科学者のレポートによると毎日大さじ3杯のグレープフルーツのペクチンを毎日、カプセルの形でも食事に加えることでも約8%のコレステロールを落とすことができると報告しています。繊維を栄養補助食品で摂るとき、注意しなければならないことがあって、このタイプの繊維質は他の大変重要な栄養素のベータカロチン、ボロン、カルシウム、銅、鉄や亜鉛などの体内吸収を妨げる作用をする事があるのです。植物から繊維質を取り入れる場合にはこの危険はより低く押さえられます、つまり植物にはそれ自体に余分な栄養素が含まれているからです。
★★ アボカド(Avocado/Persea americana)
 アボカドはもっとも脂肪分の多いフルーツなので心臓に疾患のある人々からはしばしば避けられてきました。しかし、「ローレンスの天然産物の研究」の価値あるレポートによるとアボカドにはコレステロールを下げる効果があるのです。研究の一つに、女性たちにアボカドと単不飽和脂肪酸(オリーブオイル)の多い食事と、他方炭水化物の多い食品(でんぷんと砂糖)がたっぷりの食事を選ばせました。6週間後、オリーブオイルとアボカドの食事を摂った方は8.2%のコレステロールの低下をみました。
わたしは健康的な食事には炭水化物の多い食品を減らすべきだといっているのではなく、時たまアボカドを楽しんでも大丈夫だと思っているのです。アボカドにはほかでは摂ることのできないユニークな成分もたくさん含まれているのです。
★★ ビーンズ(Beans/Phaseolus マメ)各種豆類
 マメ類は高繊維質で低脂肪、コレステロール減量への切符のような食品です。しかも、豆類に含有するレシチンという物質はコレステロールを除去する役目もあるのです。ある研究では、一日1.5カップのヒラマメ(レンズマメ)かインゲンマメを使ったスープを摂っていると19%のコレステロールを減らすことができたと発表しています。
★★ セロリ(Celery/Apitan graveolens オランダミツバ)
 ある研究で、研究用の動物たちに高脂肪の餌を8週間与え続けてコレステロール値を高めておき、その後動物たちにセロリ・ジュースを与えたのです。セロリ・ジュースは動物たちの総コレステロール量とLDLレベルをしっかりと落としていました。セロリが人間にとってもコレステロールを落とす効果があるのかははっきりと明言はできませんが、この野菜がおいしいだけのものではないことは確かなのです。
★★ ガーリック(Garlic/Allium sativum ニンニク)とオニオン(onion/A. cepaタマネギ)
 多くの研究で示されているように、一日ガーリックの一片(オニオンは半個)を摂ることは総コレステロール量を10~15%落とす効果があり、これはほとんどの人々に適応するようです。そのうちのある一例の研究では、ガーリック800ミリグラム(およそ1片)を日常摂っていた人々は血圧の降下と同様にコレステロールレベルの降下も経験しています。特にヨーロッパでガーリックは心臓血管のコンディション、特に高コレステロール症の改善療法として公認されているのです。
 別の研究では、一日大さじ2,3杯のオニオン・オイルが中程度のコレステロール症の患者の約半数のコレステロール値を下げるのに役立ったとのこと。血液中のコレステロール・レベルがオニオン・オイルを摂っている間、7から33%低下したのです。
これらスパイシーなハーブを毎日の食事にたっぷりと使うことはとっても良いアイデアだと、私には感じられます。
★★ ジンジャー(Ginger/Zingiber officinale ショウガ)
 ジンジャーがコレステロールを下げる降下があるこをたくさんの研究が明らかにしています。このジンジャーを高コレステロール症の食事にも是非加えていただきたいものです。
★ フェヌグリーク(Fenugreek/Trigonella foenum-graecum コロハ)
 このハーブには粘液質の繊維が豊富に含まれています。そのコレステロール値を下げる力は動物実験のみならず人への臨床実験でも明らかになっています。フェヌグリークの本種にはさらに成人病型糖尿病かんじゃの血中コレステロールと尿の糖分を減らすことがわかっています。
★ ナッツ(Nut 木の実)
 コレステロールの高い人には高脂肪のナッツ類は避けた方が良いと思っていませんか、しかし25,000人以上の米国人を調査した結果、日常たくさんのナッツ類を食べている人々がもっとも肥満の比率が少なかったのです。ただし、それらの被験者はすべて健康体だったので、あえて私は心臓病や高血圧の患者さんにはナッツ類はお勧めしません。でも分別のある健康的な家族にとって、ナッツ類は肉類の摂りすぎよりは害が少ないものだと思います。ナッツ類には飽満感を感じさせてくれる働きがある可能性もあるのです。たとえばくるみには神経伝達物質のセロトニンが含まれ、飽満感に関わっているのです。
 ところで、ナッツ類を多く消費することは又、重大であるにせよないにせよ心臓発作への発生率が低いことも関連づけられているのです。これは高コレステロール症の人ならば誰でも興味を引く事実でしょう。
★ サフラワー(Safflower/Carthamus tinctorius ベニバナ)
 ある研究で明らかになったことは、ふつうのオイルからサフラワーオイルに替えて8週間で総血清コレステロール・レベルが9~15%、悪玉コレステロールLDLが12~20%低下したことです。
★ セサミ(Sesame/Sesamum indicum ゴマ)
 植物にはすべてフィトステロール(植物性脂質)を含み、これは血流中に吸収されて血中のコレステロールのある程度を追い出す効果のある物質なのです。私の資料では、フィトステロールの含有率(乾燥時重量比較)の一番高い食べ物はゴマでした。
 そのほかの食材でフィトステロールの含有比率の高いものを順に並べるとレタス、ヒマワリの種子、ヘーゼルナッツ、キュウリ、アスパラガス、オクラ、カリフラワー、ホウレンソウ、イチジク、タマネギ、イチゴ、カボチャまたはトウナス、大根、アンズ、トマト、セロリそれからショウガとなります。
 あなただったらコレステロールを上げる肉類に替えて上記の材料から低コレステロールのサラダやスープなどを調理することは簡単ですね。たとえば、イチジクやストロベリー、アンズにショウガを添えた高フィトステロール・フルーツサラダはいかがでしょうか。
★ シイタケ(Shiitake/Lentinus edodes)
 この美味なキノコにはレンチナンという成分が含まれます。「ローレンスの天然産物の研究」によればれレンチナンはコレステロール低下の働きをし、さらに抗腫瘍(ガン)、抗ウイルス効果や免疫力増強効果をも持っているのです。
(訳者注:最近シイタケやマイタケ以上の免疫力増強効果のあるものに「アガリスク茸」というブラジル産のキノコが日本でも注目を集めています。)
 動物実験ではレチナンの抽出成分を低濃度服用させることでコレステロールレベルが25%落ちたという報告もあります。