ご注意
まずこれをお読みの皆様にお願いですが、現在医療機関で治療を受けられている方は、必ずかかりつけの医者に相談の上お試しください。また、自己診断は禁物です。まず医療機関の診断を受けた上でご自分の体調を正しく把握してください。
 およそ10年前に、4回ほど立て続けに私のところに訪問者があり、チャイニーズクラブモスという植物があるかどうか聞いてきました。ヒューパージーンと呼ばれているそうですが、このハーブから抽出される成分はアルツハイマー病の進行を抑える可能性があるとのことでした。訪れてきた人たちの親が皆この病気にかかっていて、効きそうなものなら何でも藁にもすがるような思いのようでした。
 私にはアルツハイマーにこのチャイニーズクラブモス(Chinese club moss/Huperziaserrata)を用いることは聞いたことがありませんでしたが、少しばかり私のデータベースを調査してみたところ、私の庭には栽培してなく、ヒューパジアというのがある種のリコポディウム・クラブモス(Lycopodium club mosses=Stag's Horn Clubmossスタグスホーン・クラブモス/ヒカゲノカズラ)という代替名ということで、近種がメリーランドにある私のブドウ園の周りに自生していることがわかりました。
脳に有効なコケの成分

 あるインディアンの種族がこのリコポディウムを食べていたのをかすかに思い出し、さらに調査したところ、その種族は結果米国東部のチッペワ族ということがわかりました。ブドウ園に生えていたクラブモスを標本にサンプリングして、食してみましたがその味は食欲をそそるようなものではありませんでしたね。
 研究者たちはヒューパージンという物質がアセチルコリンの崩壊を防いでいることを突き止めました、このアセチルコリンという物質は脳の認識力と推理力の役割をする働きの脳内物質(神経伝達物質)なのです。アルツハイマー病の人たちはしばしばこのアセチルコリンが欠乏しているのです。この欠乏が病気の原因なのか、結果なのかは未だに明らかになっていません。しかし、アルツハイマーの研究者たちは積極的に治療方法を追い求め、アセチルコリンの破壊を防ぐか、もしくはその前駆体のコリンを脳内組織に注入する方がよいのか探求しています。
 いずれにしろ、多数のハーブを含めて、脳内のアセチルコリンを増強するものには何があるのかを研究することが、現在この病気に対するもっとも良いアプローチであるように思われています。
頭脳流出

 アルツハイマーという病気は高齢に伴う認識機能の喪失が主要な原因とされています。米国高齢者協会(NIA)はこの病気の影響は米国人四百万人に影響を与えると見積もっています。そして65歳以上の約10%、85歳を越えると50%が罹患すると考えられています。2,3年前まではアルツハイマー病への治療法は全くありませんでした。
 米国FDAはタクリン(商品名:Cognex)は脳内のアセチルコリンを維持する働きで症状を遅延させる効果を持つ医薬品として公認されています。(訳者注:日本でもこのタクリン成分は臨床的に有効であると認められています。詳しくは「タクリン」でインターネット検索してください。)この医薬品の副作用として、高い確率で肝機能障害の原因になるなど、肝臓へは有毒な作用を持っています。今のところほかの医薬品は開発中とのことですが。
 当然、それらの薬は合成化学品です。また、当然のように製薬会社とFDAはアセチルコリンの破壊を防ぐ成分を含有すると思われるハーブを総ざらいして、見込みのある代替品を探しているようです。
アルツハイマー病のための「緑の処方箋」

 幸運にもクラブモスのほかに、かなりの種類のハーブがこの破壊的な病気の治療と予防に見込みのありそうなものがあるのです。
"★"の数は効果の高さの指標です。
★★★ホースバーム(Horsebalm /Monarda多種あり:ベルガモット)
【訳者注:ホースバームの和名がないので、学名(Monarda)に対応する日本語の植物名を使いました。同じ学名の植物にも数種あるようです。】
 ホースバームにはキャバクロール(carvacrol)という有益な成分を含有していて、オーストリアの科学者がこの成分がアセチルコリンの破壊を防ぐ助けをする働きを発見しました。
 ホースバームは又チモール(thymol)という成分も含有し、同様にアセチルコリンの破壊を予防しています。(訳者注:もともとチモールは抗菌・防腐剤としてつかわれていました。)ホースバームに含有するある成分はどうも脳血液関門(bloodbrainbarrier)を素通りできるようなのです。通常、身体の防御反応の脳血液関門が働いて血液に含まれる有害物質(薬物も含む)から脳の組織を守っているのです。しかし、この脳血液関門がしばしば働き過ぎることで、治療に必要な医薬品成分が脳内に届かないことがあるのです。ホースバーム成分はこの偉大な関門を素通りしてしまうようで、ホースバーム成分を含むシャンプーやスキンローションを使うだけでも有益な効果があるかもしれないということなのです。脳みそでなく頭の毛髪にホースバーム入りののシャンプーをするだけで、FDA公認のタクリンと同様の効果があるならば私は大いにそんな賭けに参加したいものです。しかもその方が肝臓にとっても安全だし、安くすむでしょう。
 ホーズバーム入りのシャンプーが手に入らないときは、作り方は簡単です。あなたのお気に入りのハーブシャンプーにホースバームのチンキを数滴たらすだけです。(訳者注:ベルガモットの精油を入浴に使ってみました。4,5滴浴槽に落として入浴したところ、翌日は朝からいつもより頭の中がはっきりとした気分になったように感じました。受験生には有効ではないかなと感じました。)
★★★ローズマリー(Rosemary /Rosmarinus officinalisマンネンロウ)
 体内の活性酸素(フリーラジカル)が果たすアルツハイマー病への役割を示す証拠が数例ですがあがっています。もしもそのようなことが原因であれば、ローズマエリーが効果を上げるでしょう。
 ローズマリーには20種類以上の抗酸化物質を含み、この物質はフリーラジカルをぬぐい取る効果があります。あまたの抗酸化物質の中で、ローズマリーの持つ抗酸化力は際だって効果があります。さらにこのローズマリーは6種類にも及ぶアセチルコリンの破壊を防ぐと報告されている物質を含有しているのです。非常に興味深いことは、アロマセラピストがアルツハイマー病の治療にこのローズマリーオイルを使うことを推奨しているのです。バーム、フェンネル、セージのオイルも同様におすすめとのことです。
 ローズマリーには記憶力強化のハーブとして長い歴史を持ち、追憶のハーブとしても有名です。ローズマリーシャンプー、ローズマリー茶、浴槽にローズマリーなどはタクリンなどと同様の効果があるので抗アルツハイマーグッズとして取り入れてもよいでしょう。
 ここにお勧めしたグッズの長所としてはまず安全で、どのような形でローズマリーを使用してもとても気持ちよく使えるということです。もし私のこの情報が間違っていたとしても、体への危害はほとんど全くゼロといってもいいくらい小さいのです。そして、正解ならばアルツハイマーの立派な予防になるからすごいですよね。
 アセチルコリンの破壊を阻止するローズマリーの成分は、幾分かは皮膚を通して吸収され、幾分かは脳血液関門を通過していきます。ローズマリー配合のシャンプーを定期的に使えば、タクリンの働きのように脳内のアセチルコリンの備蓄に役に立つということも考えられますね。米国内ではローズマリー配合の市販のハーブシャンプーを買うこともできるし、でなければお好みのシャンプーにローズマリーのチンキ液を加えて使ってもよいですね。
★★ブラジルナッツ(Brazil nut /Bertholettia excelsa)
 さらに加えてアセチルコリンの破壊を予防する治療に焦点を当て、研究者たちはアセチルコリンの基礎的要素のコリンを供給することができる栄養素の補給を病気の治療とする可能性の研究も進めています。レシチンにはこのコリンを含有し、私のデータベースによるとブラジルナッツが食べ物の中でレシチンがもっとも豊富(乾燥状態で約10%)なものなのです。
 他の植物性の食べ物やハーブのなかにもレシチンの含有量が豊富なものもたくさんあります。含有量の豊富な順に挙げていくと、タンポポの花、ポピー種子、大豆、緑豆となります。かなりの種類の植物、フェヌグリーク(コロハ)の葉、シェパーズパーズ(ナズナ/ペンペングサ)などを含むものが、それ自身にコリンを含有しています。その他の植物性食物とハーブが、少量ですがコリンを含みそれらはホアハウンド(ニガハッカ)、ジンセング(チョウセンニンジン)、カウピー(ササゲ)、サヤエンドウ、緑豆、ヘチマ、レンズマメ、アンゼリカ(トウキ)が挙げられます。
 研究者たちはさらにアルツハイマー病患者に対して、高コリン食や高レクチン食を食事の主要食にして臨床研究も行っています。予備試験ではなかなかよい感触が得られたようですが、その後の試験では記憶力の改善に顕著な改善はみられなかったようです。私はそんなに悲観的にならずにコリンとレシチンの食物をとることは有効であると感じています。
★★ダンデリオン(Dandelion(/Taraxacum officinaleタンポポ)
 この花はレクチンの供給源になる食べ物で、しかもコリンについても手頃な供給源になります。(この二種の成分はしばしば同じ食べ物に含まれるようです)。レシチンには実験用マウスで記憶力を増強させたり脳内のアセチルコリンを集約させ濃度を上昇させることがわかっています。人間の脳内の治療法はまだわからないところが多いのですが、解明の可能性は私は楽観的に見ています。さらに、タンポポはとても滋養に富んでいるのです。
★★ ファバ・ビーン(Fava beans / Vicia fabaソラマメ)
 ファバビーンにはレシチンがとても豊富に含まれています。それにこの豆は私の持っている資料「活脳スープ・聖書からの教え」の主要な成分なのです。実際、この種のいろいろな豆にはレシチンやコリンが豊富で、ダイエット食のみならずアルツハイマー病の予防や治療に関心のある人々にもよく取り上げられているのです。
★★ フェヌグリーク(Fenugreek/Triglonella foenum-graecum コロハ)
 このフェヌグリークの蒸しあげた葉は、インドレストランで巡り会ってから少なからず私が熱中したものでした。これはコリンの供給源の中でも大変よいものです。(乾燥重量の1.3%も含有しています。)
 私たちの見るところ、食物のコリンはひょっとするとアルツハイマー病の予防や治療のお助け役になるかもしれません。フェヌグリークの緑葉はベータカロチンも豊富で、アルツハイマーの進行を抑えたり予防する手助けをする抗酸化物質でもあるのです。
「活脳スープ・聖書からの教え」
 このスープはその材料のすべてが聖書に述べられている植物で、アルツハイマー病にかかっている人すべてにとって有効なものだといわれています。原料の多くがコリンが豊富で、このコリンはたくさんの研究者が患者のためになると信じているものです。この活脳スープに使われる原料としては大麦、ヒョウタン(ユウガオ)、タンポポの花と緑葉、ファバビーン(ソラマメ)、フラックス(アマニ)、カリフォルニアン・ポピーシード(ハナビシソウ)、スティンギングネトル(セイヨウイラクサ)、ひいたクルミ、砕いた小麦。(スティンギングネトルの葉には刺毛があるので収穫には手袋が必要ですが、調理してしまえば柔らかくなります。(訳者注:スティングには刺すという意味があるようです。)スープの味付けにはバーム、ローズマリー、セージ、セイボリー(ヤマキダチハッカ)がよいでしょう。これらには脳内にアセチルコリンを保つ役目をするし、その他の成分にはやはり有益な効果があると科学者たちは認めています。これらの材料を使ったスープをご自分で作って存分に楽しんでください。一度に全部の材料がなくてもかまいませんよ。実際、一度に全部の材料はそろわないでしょう。材料のリストをいつも持ち歩き、入手できる材料でその都度いろいろなスープを楽しんでいただければよいと思います。
★★ ギンコウ(Ginkgo/Ginlgo biloba イチョウ)
 数百以上のヨーロッパでの研究で、ギンコウの葉のエキスが記憶力の低下や循環器系の衰えなどの幅広い老化現象に有効であると公認されています。ギンコウをアルツハイマー病に使ったデータはまだありませんが、この病気に薬効があると聞いても私は驚きません。試してみる価値は大いにありそうです。
 エキスの一日摂取量は60から上限240ミリグラムを守ってください、一日これ以上は摂ってはいけません。不必要に大量に飲むとギンコウの副作用(下痢、過敏症、興奮で不眠になる)が起こることがあります。
★★セージ(Sage/ Salvia officinalis ヤクヨウサルビア)
 1 7世紀のハーバリスト、ジョン・ジェラルドは「セージには弱った脳または記憶力を一時的に回復させる・・」と述べています。イギリスの研究者たちはセージの成分がアセチルコリンを破壊する酵素を抑制することを突き止め、これがアルツハイマー病の予防や治療の役に立つようだと見ています。ローズマリーのように、セージは活性酸素に対抗する抗酸化成分が豊富なのです。
 セージの使用上の注意として、一時に多くの量を摂取するとけいれんやひきつけの発作を起こすことがあります。
★★スティンギングネトル(Stinging nettle/Urtica dioica セイヨウイラクサ)
 このハーブには必須ミネラルのボロンをかなりの量を含有、体内のホルモン「エストロゲン」を循環させるに必要な量の2倍があるということです。そしていくつかの研究の結果、エストロゲンは短期間だが記憶力を増進し、アルツハイマー病の患者の一部に気分を高揚させる働きがあることがわかりました。
★★ウィロウ(Willow/Salix ヤナギ/各種あり)
 ある研究では関節炎の治療で抗炎症薬をたくさん摂っている人にはアルツハイマー病の発生率が低いことがいわれています。もし、それらの薬剤がアルツハイマー病の予防の役に立つならば、ハーブのアスピリンともいわれるヤナギの樹皮はとてもよいと思います。忘れてならないのは、あなたがアスピリンに対してアレルギーならば、ヤナギの樹皮やアスピリン成分を含んだハーブは摂らない方が安全でしょう。
★ センテラ(Centella,Gotu Kola/Centella asiatica ツボクサ)
 このハーブは何百年も前から民間療法で脳の栄養源として評判をとっていて、強い知力や精神力を保持する助けをするということです。私の手元には薬効のデータがないので、それだけの評判を取れるのかちょっと疑わしい気がしています。
訳者注:東洋ではこのハーブには長寿のハーブといわれ脳に栄養を与え精神力を養うということで新たな注目を集めています。強壮、抗炎症、皮膚の感染症の治療、血液の浄化と免疫機能を高め、肝臓病や高血圧の治療にも使われると資料にはあります。多量に摂取するとめまいを起こすことがあります。
★ハーブ園芸
 あなたの家族にアルツハイマー患者がいたか、その他の点でこの病気について関心を持っていればハーブ園芸を始めることを検討してはいかがでしょうか。ハーブ園芸はアルツハイマー病に対抗する力を持つハーブとの前向きな取り組み方といえるでしょう。ご説明したハーブは日本国内であれば多少の環境の違いがあっても毎年成長してくれるでしょう。それだけでなく、ガーデニング(園芸作業)に必要と思われる創造力と肉体的努力はきっと脳の働きを活性化するのに大いにお役に立つと信じています。ハーブ園芸の詳細は「はじめに」の章を参考にしてください。