ご注意
まずこれをお読みの皆様にお願いですが、現在医療機関で治療を受けられている方は、必ずかかりつけの医者に相談の上お試しください。また、自己診断は禁物です。まず医療機関の診断を受けた上でご自分の体調を正しく把握してください。
 甲状腺分泌の治療を目的にしては、難しいところがあるので積極的にはお勧めは出来ませんが、ナチュラルという意味での取り組みとして、医薬品の補助としてハーブなどを摂取することには価値があるものもあります。さらに、かかりつけの医者の勧めるものが何であれ、いろいろの自然療法の中から何か取り入れることも考慮しても良いと思います。
 前号でもご紹介しましたが、私(J.デューク氏)が甲状腺機能亢進症の患者さんや同機能低下症の方にも勧める最高のハーブとしてはビューグル・ウィード、レモンバーム(Lemon balm メリッサ)、セルフヒール(ウツボグサ/ナツガレソウ)、ランタナ(Verbena/Lantana シチヘンゲ)があります。おもしろいことに、上記のハーブは甲状腺機能の低下症、亢進症のどちらにも有効なのですが、この理由は甲状腺が分泌するホルモンが多すぎても少なすぎても正常なレベルに戻す作用があるようなのです。
甲状腺機能低下症のための緑の薬局

 ここで甲状腺機能低下症に使えるいくつかの自然療法を説明しましょう。
"★"の数は効果の高さの指標です。
★ゲンティアン(Gentian/Gentiana officinalis ゲンチアナ/イエローゲンティアン)
 ハーブ薬理学者ダニエル・モウリー博士の研究で、このゲンティアンには大変にがい成分(配糖体アマロゲンチン)を含み甲状腺の働きを正常に保つ作用がある事が知られています。博士自身が治療のため作った甲状腺の処方箋で、患者さんに勧めてもいるものはゲンチアンを主としてアカトウガラシ(カイエンペッパー)、アイリッシュモス(ヤハズツノマタ)、ケルプ(コンブ)、ソー・パルメット(ノコギリパルメット)を配合したものです。(訳者注:おそらく配合したものを煎じて服用するものと思われます。)
 私が甲状腺機能不全患者だったら、このこの組み合わせを試すのを躊躇しないでしょう。
★ ケルプ(Kelp/Fucus vesiculosis コンブの種類)
 ケルプには多量のヨウ素をはじめ必須ミネラルもたっぷり含有しているので、体内での甲状腺ホルモンの生成量を正常な状態に戻そうとします。泌尿器科のジェイムスバルク博士とその妻の管理栄養士フィリスは共にこのケルプを甲状腺機能低下症の治療に強く勧めています。それにこのケルプは苦痛なしにダイエットの効果もあるとのこと。
 米国では健康食品店でこのケルプの粉末を入手できます。シーズニングとしてふりかけにすれば食べ易いと思います。日本人にとってはなくてはならない食べ物。どんどんたべて損なことはないようです。
★マスタード(Mustard/Brassica nigra クロガラシなど)
 多量のヨウ素を含むことに加えて、含有するチロシン成分からは甲状腺ホルモンが生成されます。マスタードの葉にはチロシンを最高に含有し、ドライ状態で1.9%も含まれています。他の食物でチロシンを含有する多い順に並べていくと、ハッショウマメ(velvetbean)、イナゴマメ、ウィング・ビーン(winged beans)、豆モヤシ、ハウチワマメ、ダイズ、カラスムギ(オーツ)、ピーナッツ、ホウレンソウ、クレソン(ミズガラシ)、ゴマ、栗カボチャ、チャイブス(ニンニク、ニラの種類)、ソラマメ、シロザ、ヒユ、カボチャの種子、サヤエンドウ、キャベツなどが上げられます。コンブ類からのヨウ素と共に、植物から摂取したチロシンは甲状腺から分泌されるホルモンのチロキシンの生成に貢献するようです。
 症状の改善に役立つスープをコンブ、マスタードの葉、ホウレンンソウ、ゴマ、カボチャと大豆で風味良く作るのも結構でしょう。ほかにはサラダとしてマスタードの生葉、ホウレンソウ、シロザ、豆モヤシ、ラディッシュ、カボチャの種子とゴマをたっぷりとる手もあります。
★ラディッシュ(Radish/Raphanus sativus (ハツカダイコン)
 ラディッシュはロシアでは長い間、両方のタイプの甲状腺障害に使われてきた、とハイネマン博士の「フルーツ・野菜とハーブの百科事典」に掲載されています。ロシアの研究者が博士に語ったところによると、ラディッシュに含まれる化学物質ラファニンが甲状腺ホルモンのバランスを保つ助けをするとのこと。十分なラファニンが血液中を巡ることで、内分泌腺はホルモンの過剰や不足になる程度を低く抑えてくれるのです。
★ セントジョンワート(St.-John's-wort/Hypericum perforatumセイヨウオトギリソウ)
 多くの抗うつ剤のように、このハーブにはモノアミン酸化酵素阻害剤(MAOI)の働きがあります。うつ状態は甲状腺機能低下症の典型的な症状で、モノアミン酸化酵素阻害剤は患者の気分を高揚させる助けになります。ただこのハーブは甲状腺機能低下症の一般的な症状のための対症療法的な使い方で、病気そのものに働きかけるものではないのですが、憂うつな気分の時には有効でしょう。このモノアミン酸化酵素阻害剤やこれが含まれるハーブを取っている人は基本的に避けるべき食べ物(アルコール飲料、くん製やピクルス)やある種類の医薬品(風邪薬、花粉症薬、アンフェタミン(覚醒作用)、麻薬、トリプトファン(鎮痛・精神安定剤)やチロシン(脳機能活性剤)が上げられます。
 また、妊婦はこのセントジョンワートを摂ってはいけません。さらにこのハーブは皮膚が太陽光に敏感になるので、使っている間は激しい日焼けは避けなければいけません。
★ウォールナッツ(Walnut/Juglans イングリッシュウォールナッツ/ペルシアグルミ)
 トルコの民間療法に、このウォールナッツは甲状腺のトラブルや体内の各種の内分泌線の治療に使われています。何か理由があるようなのです。ある研究では、生のウォールナッツのフレッシュ・ジュースにはチロシンの量が二倍含有しているとの報告があります。さらに生のウォールナッツを20分ほど煎じるとチロシンの量がさらに30%もふえとも言われています。
 ウォールナッツそれ自体を一掴みほど楽しんでも有益な結果が得られそうですが、さらにウォールナッツオイルをサラダの風味づけにドレッシングのように使ってもさらに使いやすいのではないでしょうか。渋皮も劣らず有効ですが、ちょっと食べづらいのが困りますが。