ご注意
まずこれをお読みの皆様にお願いですが、現在医療機関で治療を受けられている方は、必ずかかりつけの医者に相談の上お試しください。また、自己診断は禁物です。まず医療機関の診断を受けた上でご自分の体調を正しく把握してください。
 これまで私が経験した痛みで最悪だったのが椎間板ヘルニアによるものでした。その痛みといったら時折おそってくる耐え難い痛風の痛みのようでした。医者は型どおりの治療をして、もしかすると習慣性の付いてしまう痛み止めの錠剤と非ステロイド系の炎症止めの薬をくれました。このときは今までに飲んだ薬の量よりも椎間板ヘルニアで飲んだ量の方が多かったと思いましたね。
 同時に以前に摂ったよりもより多くのハーブも併せて飲んだのですが、もちろん薬学的に副作用がもっとも少ないものを選びました。医者はどうやら痛みに関して、とがった鋭い痛みと持続する慢性的な痛みの2種類の痛みを認識しているようです。とがった鋭い痛みは突然襲ってきますが、一般的にこの種の痛みがあるときに普通の鎮痛剤で楽になって痛みが鎮まるようです。
 例として頭痛や怪我をしたときの痛みなどがあげられます。慢性的な鈍い痛みはまず激しい痛みで始まり、その終わりがずっと長く数ヶ月、数年に亘って続き、普通の治療ではなかなかおさまらないことがしばしばあります。その慢性的な痛みはあなたを地獄へ引きずり込むように憂うつにするでしょう。痛みはあなたを意気消沈させてしまい、暗い気分はその治療をも難しくさせる影響があるのです。
 もしもあなたが頑固な持続痛があるのだったら、診断のために医者に相談すべきです。原因がきちんと分かってしまえば的確で合理的な治療もあるのです。でも慢性的な持続痛を持つ人たちにとって、明確な診断がつかないまま不快な痛みが続くようであれば私はペイン・クリニックで相談することをお勧めします。最近ヘルス・ケアの現場に登場したこの医療クリニックは多種多様な医薬品や治療を組み合わせて、完全に取り除けない痛みの抑制(コントロール)を行うための場所なのです。ペイン・クリニックで行われる多様な治療の取り組みは運動療法や瞑想(メディテーション)、バイオフィードバック(生体自己制御)など現代医療にとらわれない方法が大胆に採られています。
痛みのための「緑の薬局」

 それでも痛みを抑える助けになるハーブもたくさん存在するのです。
"★"の数は効果の高さの指標です。
★★★クローブ(Clove /Syzygium aromaticum チョウジ)
 多くの国の歯医者が歯痛になったとき家庭で出来る最初の手当はクローブオイルを勧めています。実際に私の母は子どもの歯痛にこのオイルを与えてくれました。良く効きますがドイツのコミッションEというドイツ政府にハーブ医療についてアドバイスをする科学者グループも推奨しています。使用法はこのオイルを傷む歯に直接塗ります。
★★★レッド・ペッパー(Red pepper/ Capsicum トウガラシ、多種あり)
 レッド・ペッパーにはサリチル酸塩という痛みを抑制する化学物質が含まれ、これはアスピリンと同等の効果のあるサリシンに類似のものです。実際、レッド・ペッパーはかつてサリチル酸塩の最も含まれる食べ物の中で最上位にありましたが、最近の研究ではその地位も大分下がってしまったようです。これもやはりカプサイシンを成分を含み、この成分がエンドルフィンという生体の持つ自然の鎮痛剤を生成するのを刺激してくれるのです。皆さんの中にはレッド・ペッパーのスパイシーな辛さが大好きという方もいるでしょう。私もそうです。
あなたの料理にこの素晴らしいスパイスをもっと使って欲しいものです。
 カプサイシンは外薬に使われると物質Pと共に皮膚中の痛みの伝達信号をじゃまするように働きます。多くの研究で示されていますが、このカプサイシンを外薬に利用することの利益はFDA(米国食品医薬品局)も認めているように、カプサイシンを0.025%含有した鎮痛スキンクリーム(商品名:Zostrix, Capzasin-P)が関節炎やリウマチの手当に有効なのです。(あなたがカプサイシン入りのクリームを使ったあとにはその手を良く洗って下さい。成分が目にはいるといけませんから。それに、この成分に非常に敏感な人もいるので、初めて広い皮膚の部分に使う前に、皮膚の小さい範囲で試して見て下さい。その部分に不愉快な反応があるようだったら、使用をやめた方が良いでしょう。)
★★★ウィロウ(Willow/Salix セイヨウヤナギ多種あり)
 ウィロウの樹皮にはサリシンが含有しています。実際にはほとんどの植物がサリシンかその同種のサリチル酸塩を幾分かは含んではいるのです。
 ちょうど百年ほど前にアスピリンが数種の植物から抽出されました。その成分が多く含まれる植物はウィロウ、メドウスイート(セイヨウナツユキソウ)、ウインターグリーン(トウリョクジュ)などでした。戦時中医薬品はとても品不足で、知識のある医者は痛み止めにウィロウの樹皮を昔のように使い成功したと言うことです。コミッションEはこのウィロウの樹皮には頭痛から関節炎までの痛み止め効果があることを認めています。
 多種の痛み止めで、私がまず最初に使うとしたら、サリシンが豊富な種類のウィロウの樹皮ティースプーン半分、またはそれよりサリシンの含有量が少ないホワイト・ウィロウ(セイヨウシロヤナギ)だったらティースプーン5杯までが限度でしょう。もちろん誰もが、どの種類のウィロウがサリシンをどの程度含むか知っているとはかぎらないですよね。そこで使うウィロウを少量お茶にして飲み、痛みの軽減の効果が現れるまで少しずつ増やしていく事をお勧めします。
 もしもアスピリンに対してアレルギー体質ならばアスピリン成分の含有するどんなハーブも摂取を控えて下さい。それに、風邪や流感などウィルス感染による痛みを持つ子どもにはアスピリンもアスピリンを含有するハーブなどは与えてはいけません。ライ症候群に発展する可能性があり、肝臓や脳に障害を与えるおそれがあります。(訳者注:ライ症候群とは、ある種の急性ウィルス感染に続発する傾向のある、急性脳症と肝臓の脂肪浸潤を来す症候群)
★★イブニング・プリムローズ(Evening primrose /Oenothera biennis メマツヨイグサ)
 このハーブはアミノ酸トリプトファンの最良の資源のうちのひとつです。研究では、トリプトファンの補給は激しい痛みや病気による慢性的な痛みを抑えて、また人々の痛みに対する感度を低く抑える効果を持っています。
 自然療法士はこのイブニング・プリムローズの使用量を一般的な痛みの解消や糖尿病の患者がしばしば罹る糖尿病性神経障害による神経破壊が原因の強い痛みの状態の処方に一回1グラム(ティースプン約1杯)を一日4回ほど摂取するように勧めます。種子を粉末にしたものがよいですね、なぜならイブニング・プリムローズを種子からオイルにする工程でトリプトファン成分の多くが失ってしまうのです。
 訳者注:トリプトファンとは鎮痛・精神安定効果を生むセロトニン(メラトニン)や、うつ病などへの効果が期待されるノルアドレナリンなどの神経伝達物質の脳内生産を助ける必須アミノ酸の一種。
★★ジンジャー(Ginger/Zingiber officinale ショウガ)
 ジンジャーが痛みを和らげることを知っている人は少ないですが、その通りなのです。
 ある研究で、56人の痛みで悩んでいる人を集めーーー28人がリウマチ性関節炎、18人は骨関節炎、10人が筋肉痛状態―――彼らに一日ジンジャーの粉末ティースプーン2から4杯を与え続けたところ、三ヶ月後、75%以上の人が副作用なく痛みが顕著に抑えられたとの報告がありました。
 ジンジャーは外用にも使えるんですよ。ジンジャーの温湿布は腹部のけいれんや頭痛、関節のコリなどを和らげます。その温湿布にアカトウガラシを加えるのも効果的です。
★★ カバカバ(Kava kava/methysticum)
 このトロピカルハーブには2種類の痛み止めの成分が含有、dihydrokavain とdihydromethysticinというアスピリンに匹敵する鎮痛効果があるとのこと。しかしながらカバカバは麻薬として言われていますが、常習性はないようです。この葉を噛んでいると、口の中が無感覚になってきます。結果として、この植物にはのどの痛みや歯肉炎、口内炎や歯痛などには使えそうだと言うことがわかります。
★★ラベンダー(Lavender/Lavandula 多種あり)
 ラベンダーのエッセンシャル・オイルはアロマテラピーの鎮痛効果が最も高いもので、事実アロマテラピー入門には必ず手にするものなのです。
 1920年アロマテラピー効果を発見したフランスの香水調合師のルネ・モーリス・ガットフォセは実験中の事故で手に大やけどを負ってしまいました。とっさに彼はその手を近くの冷たい液体の入った容器に浸けてしまいましたが、それがラベンダー・オイルだったのです、ガットフォセは自分の手のヤケドの劇的な治療効果に目を見張りました。その後研究者達は数種類のエッセンシャル・オイルに痛みの信号を含む神経の信号の流れを抑制するものがあることを発見していったのです。ラベンダーオイルにはその基本的な活性成分にリナロールとリナリル・アルデヒドが見られます。
 大さじ一杯の植物油にラベンダーオイルを数滴混ぜ、痛みのある部分をマッサージすると良いでしょう。
★★マウンテン・ミント(Mountain mint/Pycnanthemum muticum )
 このハーブにはプレゴン(pulegone)の含有度が高く、これは鎮痛効果を持つカプサイシンに似た化学物質です。これでおいしいお茶を作ったり、生葉を使って痛いところに湿布するなどして使います。(妊婦さんは使わない方が良いハーブです。)
★★ペパーミント(Peppermint /Mentha piperita セイヨウハッカ)
 ペパーミントの活性成分のメンソールは麻酔効果があるのです。ある研究では科学者が頭痛持ちの32人の人たちに、ペパーミント・オイルのチンキでこめかみをマッサージしたのでした。このハーブは注目に値する痛みの抑制効果があることがわかりました。
 もしもあなたがこのペパーミント・マッサージ法を試すときには、必ずエッセンシャル・オイルの原液を植物油で希釈して(大さじ1杯に数滴のエッセンシャル・オイルをたらす)使って下さい。
 ペパーミント100%のオイルは肌を刺激し炎症を起こす可能性があります。このオイルは絶対に口から摂取しないこと、微量でも身体には有害です。
★★サンフラワー(Sunflower/ Helianthus annuus ヒマワリ)
 ヒマワリの種子はフェニルアラニンという物質を豊富に含有、この化学物質は痛みのコントロールに関係することがわかっています。
 研究ではこのフェニルアラニンは痛みの感覚に関係する化学物質エンケファリンの破損を防いで痛みを抑制する効果があることがわかりました。(訳者注:エンケファリンはモルヒネ様作用を示す内因性ペプチド)さらに研究によると人間でも動物でも、フェニルアラニンは痛みを抑えるための鍼(はり)治療の効果を増加させるのです。実験用ラットでは、その化学物質がモルヒネの効果を増強ししかもより長時間保たせたのです。
 もし私が痛みで困っていたら、一掴みのヒマワリの種を食べ(いずれにしろ私はいつも何かの種を常食しているのですが)、種をすりつぶしたものを痛みのある部分に湿布するのも効果的ですよ。
★★ ターメリック(Turmeric/Curcuma longa ウコン)
 多くの臨床研究でターメリックの成分のクルクミン(黄色い色素成分)には抗炎症効果があり、これはリウマチ性関節炎を和らげるすごく有益な効果も併せて持っているのです。ただし、この効果を実感するにはスパイスのビンを一振りする以上の量が必要なようです。
 一回の使用量は専門家によると400ミリグラムずつを一日3回服用すると良いとのこと。毎日これだけ消費するとかなりの量のハーブを必要としますね。だからもしも痛みのためにターメリックを試すのであれば、市販のカプセル入りのものを使うと便利だし、カプセル状に自分で作ってみるのもよいですね。(空のゼラチン・カプセルは薬屋等で買うことも出来ます。)
★ユーカリプタス(Eucalyptus/ Eucalyptus globules ユーカリ、ユーカリノキ)
 アロマテラピスト(芳香治療家)はコノユーカリプタスにラベンダーとペパーミントを加えて鎮痛効果のあるエッセンシャル・オイルを調合しています。ユーカリプタスに発見された成分のシネオールの働きは他の痛みを抑えるアロマ成分を皮膚から素早く吸収させるのです。
 しっかり覚えて置いて欲しいことは、これらのエッセンシャル・オイルは外用に使うことがベストです、決して服用しないようにして下さい。
★ローズマリー(Rosemary /Rosmarinus officinalis マンネンロウ)
 コミッションEは痛み止め効果を得るためには乾燥したローズマリーをティースプーン2,3杯使ったお茶を飲むと良いと勧めています。
 お風呂に使うと確かなリラックス効果と鎮痛効果が得られます。布製の袋に約60グラムのローズマリーを詰めて浴槽に放り込みます。