ご注意
まずこれをお読みの皆様にお願いですが、現在医療機関で治療を受けられている方は、必ずかかりつけの医者に相談の上お試しください。また、自己診断は禁物です。まず医療機関の診断を受けた上でご自分の体調を正しく把握してください。
 かつて私を含めて3人の研究者達がそれぞれアメリカインディアンの各家族でスクォー・バイン(squaw vine)の用途を調査研究していた時のこと。私の組の一家族はボナ・ファイド(誠実な)・ラムビー(Lumbee)・インディアンで南北カロライナの境界付近に住む種族たちでした。私たちは常緑で明赤色の実をつける、地面をはう蔓性の植物と考えていたスクォー・バインと呼ばれるものについて話し合っていました。私の意見は、植物でスクォー(北米インディアンの女性)と名が付けられたのは2つの解釈があり、1つは、おそらく女性の生殖器障害のためだけに使われたので性差別的のため、もう一つの理由は有効性を人種差別的に全く無視したかったからではないかと考えていました。これを聴いたラムビーは「このハーブに効果がないという可能性は低いだろう、インディアンは生理障害に効果のない植物などを長い間使い続けるはずがないからね。」とのこと。彼と私が一致した意見は「スクォー」という言葉はインディアンの女性を尊敬したようには聞こえないということでした。今さらこの植物を改名することが出来ません、つまりハーバリスト(ハーブ専門家)達の間ではすでにスクォー・バインとして通ってしまっていたからです。そこで私たちは一計を案じ、スクォーという言葉の意味を「とても有効で素晴らしいもの」と言うことにしました。それでもまだ多少の性差別主義者はぐずぐず言っているようですが。
月経痛のための「緑の薬局」

 スクォー・バインを含めて毎月の苦痛を和らげる助けになるハーブは実際にかなりたくさんあるのです。
"★"の数は効果の高さの指標です。
★★★ ブラック・ホウ(Black haw/Viburnum prunifolium アメリカカンボク、クランプ・バーク(ヨウシュカンボク))
 またはクランプ・バークという名前で、19世紀の薬理学のほとんどの教科書に月経痛の治療薬として認められていました。このバークには子宮部をリラックスさせる物質が少なくとも4種類含有していることがわかっています。そのうちの2種(イソクレチン、スコポレチン)は筋肉のけいれんを和らげます。民間療法や近代医学でも勧めているくらいですからブラック・ホウは最初に思いつく療法だと思うし、娘が月経痛で相談に来たならこれを勧めるでしょう。ブラック・ホウはやぶ状に生える落葉低木で房状に花が咲くもので、ハニーサックル(スイカズラ)やエルダーベリー(ニワトコの実)と同族の植物です。
★★★チャイニーズ・アンゼリカ(Chinese angelica/ Angelica sinensi トウキ、)
 当帰という名でも良く知られており、チャイニーズ・アンゼリカは中国の伝統的な漢方医療に使われるハーブの中で最も広く使われているものです。女性のための強壮剤として尊ばれ特に月経痛に良く効き、東洋医学の専門家の一番のお勧めのものです。
★★★ラズベリー(Raspberry /Rubus idaeus ヨーロッパキイチゴ、エゾイチゴ)
 私が尊敬する女性ハーバリスト達は月経痛を楽にする方法としてラズベリーの葉茶を勧めるようです。
 ある研究ではこのハーブが子宮をリラックスさせる効果があることを明らかにしています。また、妊娠に伴う子宮過敏を和らげることでもよく知られていますね。
 研究者達はラズベリーの活性成分を良く知らないようですが、ピクノジェノール(天然の植物成分)のようなものではないかと推測しています。私にはピンと来るものがありました。
 ある研究で、毎日ピクノジェノールを200ミリグラムを2周期にわたり摂取した女性の50から60%が、月経痛や月経前症候群を除去したか著しく改善したとの結果を発表しています。同様に4周期続けたところ、効果があった率は66から80%にあがったそうです。このハーブのピュアな成分をピクノジェノールという名で手にすることが出来ますが、大変高価なサプリメントです。試してみたい方はラズベリーの葉茶を代わりにお勧めします。
★★ビルベリー(Bilberry/Vaccinium myrtillus コケモモ)
 このビルベリーにはアントシアニジンと呼ばれる筋肉弛緩効果のある化学成分を含み、ピクノジェノール成分も持っています。月経痛には一般的にはビルベリーのエキスを一日3回、20から40ミリグラム飲むこととされています。もしもエキスが入手できないときは、同じ効果を出すために生のビルベリーかブルーベリーをカップ半分食べること。
★ ★ チェストベリー(Chasteberry/Vitex agnus-castus )
 チェストベリーの木(チェストツリー)の小粒の実はギリシャローマ時代から月経障害に使われてきました。このチェストベリーに効果のあることには確信を持っています。
★★ジンジャー(Ginger/Zingiber officinale ショウガ)
 「日和見医学」19世紀末のアメリカで医療の主流だった医学的治療法と自然療法を組み合わせた方法による"月経痛"の治療はジンジャーを使うことがマニュアルだったようです。このハーブはベネズエラからベトナムにいたる広域な文化圏で月経障害も含めた用途に使われていました。少なくとも6種類の痛み止め成分と別の6種類のけいれん抑止剤の成分があり、ジンジャー・ティーは月経痛の解消への信頼がおける治療法なのです。
★★ カバカバ(Kava kava/ Piper methysticum カバ、カワカワ)
 この南太平洋で採れるコショウ科のカバカバはアスピリンと同様の効果のある2種類の痛み止め成分を含むと、生薬学教授のアルバート・レング博士やアーカンソー州のハーバリスト、スティーブン・フォスターが著書の中で記述しています。しかし、カバカバは麻薬に類するとも言われていますが、幻覚作用も麻薬作用もありません。カバカバから作られたアルコール飲料が幻覚症状を引き起こすことがわかっています。更に、レング博士とフォスターによれば非習慣性で依存症の原因にはならないと言っています。
 何人かのヨーロッパ人がカバカバのエキスを精神安定剤に使ったと言うことです。この植物が子宮をリラックスさせるので、月経痛の治療に使うようになったのです。
★★ レッド・クローバー(Red clover/Trifolium pratense ムラサキツメクサ)
 クローバーにはフィトエストロゲンが豊富で、この植物性の化学成分は体の中で女性ホルモンのエストロゲンと同様の働きをすることがわかっています。ハーブ専門家はこのフィトエストロゲンが体内のホルモンレベルを良い状態に保つことで月経痛を最小限度に抑える事が出来ると理解しているようです。レッドクローバーに含むフィトエストロゲンはフラボノイドのフォルモノネチン(Formononetin)という名前の成分です。
 かつて世間を騒がせた"クローバー病"と呼ばれる生殖異常は、ひつじが食べたクローバーに含まれるホルモンが大量に蓄積された結果と言うことがわかっていて、あなたがこのクローバーを食べて影響される量とはかけ離れているのでまずご心配は無用でしょう。
お茶にレッドクローバーを使う程度なら月経障害から解放するのにちょうど良いくらいです。
★★ スクォー・バイン(Squaw vine /Mitchella repens ツルアリドオシ)
 チェロキーの女性達が"周期痛"にこのスクォー・バインを定期的に利用していたと、ミシガン大学の文化人類学者で「アメリカインディアンの医薬植物の研究」の著者でもあるダニエル・モアマン博士が述べています。このハーブは無痛分娩を促すのにも使われ(今日でも使われています)、授乳期間に起こる乳首の炎症治療にも良いようです。オクラホマやデラウェア、イロコイ、メノミニーなどの種族でスクォー・バインを同様な用途に使っています。
 現代のハーバリストは一般的に妊娠時のつわりの不快感にラズベリーをキイチゴに加えて勧めているようです。チェロキーの女性と同じようにあなたもこれを使えば月経痛がとても楽になるでしょう。
★ストロベリー(Strawberry /Fragaria いちご、多種あり)
 ラズベリー(キイチゴ)と同様にストロベリーの葉は、けいれん痛を和らげてくれる薬効があると、ドイツの科学者集団の政府諮問委員会コミッションEが認めています。委員会はさらにこの薬効の医学的な証明はされなかったとも言っているようです。しかし私に言わせれば月経痛を和らげる能力の有無を脇に置いても、このストロベリー茶を飲む理由はもっとたくさんあるのです。その葉には豊富なビタミンとミネラル、エラグ酸という抗ガン作用のある成分まで含有するのです。ストロベリーの葉茶はビタミンやミネラルが不足しがちな人にとっても恩恵にあずかれるでしょう。
 アドバイスをするとすれば、ストロベリーにアレルギーのある人は葉茶を飲まないほうがよいでしょう。
訳者注:エラグ酸は2個のOH基を持つフェニル基2個を有する一種の多価フェノールです。エラグ酸はエラグタンニンの加水分解で得られ, 抗ガン剤の一つの原型とされています。その構造から, 抗酸化剤やラジカル補捉剤としての働きもあるものと思われます。
★ ヤロウ(Yarrow/Achillea millefolium セイヨウノコギリソウ)
 ヤロウは女性の強い痛みを伴うけいれんからの解放に有効であると、コミッションEで発表しています。私はヤロウには抗けいれん剤成分がたくさん含まれていることを知っているのでこの発表には当然のことと思っています。