ご注意
まずこれをお読みの皆様にお願いですが、現在医療機関で治療を受けられている方は、必ずかかりつけの医者に相談の上お試しください。また、自己診断は禁物です。まず医療機関の診断を受けた上でご自分の体調を正しく把握してください。
 チョコ・インディアン(Choco Indians)はパナマやコロンビア近隣地域に数千年前から居住していたと言われています。今では不幸にも"開発"の犠牲者となって消え去って行った部族でした。
 昔、私は他の種族のインディアンよりも彼らとより緊密に仕事をしたことがありました。1960年代前半にチョコインディアンの友人がパイパー(Piper)というブラック・ペッパーに近い種の植物について話してくれたことがあり、彼らはそれを歯痛の治療にしていたと言うのです。その植物の小枝を私に渡し、それを噛むと私の口はしびれて来ました。読者にはこのチョコ・インディアンの植物の入手はおそらく無理でしょう。しかしほかの熱帯地方産の虫歯に効く鎮痛用ハーブだったら今、台所のスパイス棚においてあるかも知れません。クローブ(チョウジ)は熱帯樹木の花のつぼみです。クローブの精油は麻酔作用や防腐作用のオイゲノール(eugenol)という成分を多量に含みます。
 私のハーブのデータベースによるとクローブのオイゲノールは他のオイゲノールを含むハーブよりも5から20倍も豊富に含有することがわかっています。実際、多くの歯科医は特に歯の神経の治療の際に麻酔や痛み抑制用にこれを使っているのです。その歯の痛みをくどくど説明する必要もないでしょう。私はかなり前から今日に至るまで馬鹿なことに歯医者にかかるのをぐずぐずと躊躇してきたのです。そんな人は私一人では無いようですが。
 歯科衛生研究所の発表によるとアメリカ国民の98%が虫歯を持っているとのこと。毎年これらの何百万人の人たちが結局歯痛に悩まされるのです。歯の痛みだったらどんな種類のものでも、歯科医に見てもらうべきですが、歯科医に見せるまでその痛みに悩む必要はありません。痛みに良く効くハーブがあるのでお教えしましょう。
コラム:デューク博士からの現代医薬品への警鐘
"ジャングルの住人の知恵"
 この章の始めでチョコ・インディアンが歯痛を止める為に使った刺激性の植物について述べました。後年この植物に再び出会ったのは私が最初にエコツアーでペルーのイキトスへ行ったときのことでした。インディアンのガイドがある植物を指さして何度も「歯痛の木!歯痛の木!」と繰り返すのです。ガイドは小さな木を一本根こそぎ抜き、ドロをこすり落としてから私に噛むように勧めました。以前に経験したように、かみ始めるとすぐに口の中が麻痺し始めました。
 ある種の香辛料になる植物の果実や根には麻酔成分を含むことが知られています。黒コショウでさえも幾分かは含有しています。数千年前から世界中のジャングルに暮らす人々は歯痛の治療に本当に重宝したことでしょう。
 このことをこのコラムに書きたかった理由が古くからの伝統的な療法が科学の眼から見ても十分に説明することが出来る事を知って欲しかったからです。科学評論家は「古民話」的な方法は西洋スタイルの化学的実験にはなじまないと言って反対しています。しかし、科学の基本的原理は自然を注意深く観察することから始まるのですが、それは伝統技術を守ってきた人たちが太古の昔から行ってきたこと『彼らの、世界の全てを見る鋭い観察眼を持ち、経験を大事にしてきた』そのことなのです。
 一般的に伝統技術を持つ人々は上手に良い薬と悪いものとを見分ける力を持っていて今日、民間医療と呼ばれるものを形作ってきました。民間医療と呼ばれるほとんどのものは数千年の間に彼らの技術を基に経験したものや期待とは反対の反応から得られた知識も少しはあるようです。それこそ我々がたった百年ちょっとの経験しかない現代の製薬界と比べて良否を言う事なんてできっこないと思いませんか。
 あまりにも頻繁な合成の医薬品はきわどく危険な毒になることがあります。たくさんの医薬品が期待しない反応のためにFDA(米国食品医薬品局)の命令で医薬品の指定を撤回されていることがその証明でしょう。
歯痛のための「緑の薬局」

 歯痛に効くハーブオイルを使うことは歯科医術でも新しいことではありません。1946年頃に出版された医薬化粧品業界紙の中でM.A.レッサー氏が寄稿した「歯痛用調剤薬」と題した論文が発表されました。彼はその中でエッセンシャル・ハーブオイルについて「オイルは歯痛用調剤薬の最高に効果のある成分として使われている。オイルの中ではクローブ(チョウジ)とオイゲノール(クローブの含有成分のひとつ)が疑いなく最も重要なもので・・・」と述べています。
"★"の数は効果の高さの指標です。
★★★ クローブ(Clove/Syzygium aromaticum チョウジノキ)
 ドイツのコミッションEという機関(米国のFDAにも相当する組織)はクローブの精油には歯痛の局所麻酔と消毒効果が高いと認めています。米国のFDAへ調査論文を教示する科学委員会でさえクローブの精油は12種類ほどある歯痛用調剤薬の中で「歯痛の時のズキズキする痛みを抑制する安全で効果的」に使えるただ一つのものだと論評しています。歯の痛みを一時的に麻痺させるクローブオイルは薬局で入手できます。(エッセンシャルオイルを扱っているお店でも良いでしょう)
 オイルは直接歯に塗るようにして、飲んではいけません。
★★ジンジャー(Ginger/Zingiber officinale ショウガ)
 このスパイスで作った湿布は歯の痛みの軽減に役立つようです。私が使うときは更にアカトウガラシのような辛み成分のハーブを加えます。ジンジャーとアカトウガラシの両方とも古くからあるからし泥(反対刺激湿布剤)として使われています。反対刺激剤として働くという意味は、ジンジャーやアカトウガラシの表面的な刺激がより深い歯痛を軽減してくれるということになります。
 歯痛用の湿布を作るにはスパイス(粉末状でもよい)を水に混ぜてべたべた状のペーストにします。小さなコットンボールをその中に落としてからつまみ上げたものを絞って下さい。そのコットンを痛む歯に直接当てます、このとき歯茎には触らないようにして下さい。
★★ レッド・ペッパー(Red pepper/(Capsicum アカトウガラシ)
 1992年でのコロンブスの航海記念のお祝いに、私もアメリカの外からレッド・ペッパーを持ち込んだ事にお祝いをしたものです。コロンブスは西インド諸島のカリブインディアンからスパイスを紹介されました。このハーブの辛みの成分、カプサイシンを肌に塗るとしばらくは熱さを覚えますが、反面これには体内の痛みの伝達を起こす化学物質Pの動作を抑制するのです。さらにレッド・ペッパーはサリチラート(サリチル酸塩)という鎮痛剤のアスピリンに似た物質が大変に多く含有しているのです。
 このハーブが古くから歯痛の治療に使われてきたことは疑いがありません。このハーブを歯痛に使うときは、ジンジャーの項の方法でコットンで歯に塗って下さい。
★★ トゥースエイク・ツリー(Toothache tree/ Zanthoxylum americanum アメリカサンショウ、プリックリー・アッシュ)
 この木の名前は古くからの歯痛の民間療法に使われてきたので付けられたそうです。アラバマ在住のハーバリストのトミー・バスは1996年に亡くなるまでこのハーブを積極的に勧めていました。使用方法は樹皮を噛むか、樹皮や小果実をお茶にして飲む方法を勧めていました。
 この木の小枝を噛んでいるだけで麻酔の効果があることを私は知っています。この木の植っている場所を探すのはちょっと難しいかも知れませんが、お使いになりたければハーブ専門店へ行けば乾燥ハーブを入手できます。
★★ ウィロウ(Willow/ Salix セイヨウシロヤナギ多種あり)
 私の歯痛対策は、このヤナギの樹皮を噛み砕いたものを痛む歯に当てておくと一時的な痛みよけになります。ヤナギの樹皮にはサリシンを含み、このアスピリンに似た化学物質が鎮痛効果を大いに発揮するのです。またはこのハーブで作ったお茶を飲んだりチンキ剤を作り用いると痛みを追放することが出来ます。(もしもアスピリンにアレルギー反応があるときは、アスピリンと同様に使ってはいけません)
★ ルバーブ(Rhubarb/ Rheum officinale ダイオウ、メディシナルルバーブ)
 中国ではルバーブの根を歯痛にも利用し、ダイオウを呼んでいます。歯痛に使うにはこの根を油で揚げてからアルコールに漬け込んでチンキ液を作ります。コットン・ボールを作りチンキ液によく浸して痛みのある歯に直接5分ほど当てます。私が歯痛の時、前述のハーブが入手できなかったらこのハーブを試してみます。ルバーブには痛みを抑える物質が少なくとも6種類含有するのです。
★ セサミ(Sesame/Sesamum indicum ゴマ)
 生薬学者のアルバート・レング博士の研究では古く中国で歯痛の治療に使われたとあります。
 セサミ1に対して水2を火にかけ水が半分になるまで煮出します。煮出したものを直接歯に使うと歯痛や歯茎の痛みに驚くほど良く効くと言われます。これにはセサミは少なくとも7種類の痛みを抑える物質を含むことが鎮痛効果を発揮する理由なのだろうと考えられています。