ご注意
まずこれをお読みの皆様にお願いですが、現在医療機関で治療を受けられている方は、必ずかかりつけの医者に相談の上お試しください。また、自己診断は禁物です。まず医療機関の診断を受けた上でご自分の体調を正しく把握してください。
 普通の咳とはごく普通の風邪よりももっと普通ですよね。冬場に病院に行く人たちの半分ほどは咳やそれに関する呼吸器系の症状の患者さんです。原因はどうあれ、咳はコンコンとおなじみのもので、粘液を排出するための咳か、何の働きもない乾いた空咳かのどちらかでしょう。
 しかし、もしもなかなか収まらない咳のときは身体が何かあなたにメッセージを送っている場合が多いです。それは単に「たばこをやめて」とか「気管支系の感染症をきれいに掃除する」とか言った簡単なことかも知れません。この咳を治療すると同時に身体があなたにどんなメッセージを伝えようとしているか注意を払う必要があるでしょう。もしも家庭での治療が効果がなく、数日間しつこく続くようだったらかかりつけのホームドクターに相談してください。
咳のための「緑の薬局」

 咳の原因にかかわらずある種のハーブには症状の軽減に役立つものがあります。もちろんハーブ的治療は古代から使われてきました。ここでは私がお勧めの方法をいくつか述べていきましょう。
"★"の数は効果の高さの指標です。
★★ コルツフット(Coltsfoot/Tussilago farfara フキタンポポ)
 カリフォルニアのハーブ専門家でハーブの持つ医薬効果の良書の著者でもあるクリストファー・ホッブス(Christopher Hobbs)氏は6種類の混合ハーブ茶をお勧めしています、内容はコルツフットを4、プランテーン(オオバコ)を4,リコリス(カンゾウ)を1,マーシュ・マロー(ウスベニタチアオイ)を1,タイムを2,これらに加えて自己免疫力増強用ハーブのエキナケア少々を合わせたものです。これは私には特に良いようです。
 コルツフットは昔から咳の治療によく使われてきました。コンフリー(ヒレハリ草)など幾種類かのハーブやフキと同様にコルツフットにはピロリジジン・アルカノイド(PAs)と呼ばれる化学物質が含有しています。この物質を多量に服用すると肝臓に悪影響を与えることがあり、長期間の服用で肝臓ガンを引き起こすことも考えられます。結果的にハーバリストの中にはコルツフットのようなPAsを含むハーブは摂取すべきでないとの理由で薬用ハーブのリストから消し去ることもあるようです。
 ただ、ドイツのコミッションE(ドイツの厚生省にハーブの安全性と薬効を諮問する専門家グループ)は咳の治療のために一日ティースプーン3杯以下のコルツフットをお茶にして用いることを推奨しています。その服用量ではPAsが10ミリグラム以内に収まるので咳止めの目的で時たまの使用であれば安全であるとこのグループは見ているようです。
 私個人としてはコルツフットを時たま使うくらいであれば全く問題は無いと思います。私も必要に応じて使っているのです。のどにやさしく働いて、咳の衝動を軽減してくれます。しかし、もしもあなたが治療の為に何らかの薬物を多量に飲んでいるのであればこのハーブは使わないで下さい、あなたの肝臓は薬物の分解・解毒の為に非常にストレスを受けているからです。肝臓の疾患の病歴を持っているとかアルコールを多用しているときもこのハーブを使ってはいけません。
★★ エルダーベリー(Elderberry/Sambucus nigra ニワトコの実)
 イスラエルの科学者達は風邪や咳、熱の手当にエルダーベリーを絶賛しています。イスラエルの研究ではエルダーベリーのエキスから作ったサンブコル(Sambucol、現在アメリカでも入手可能)が咳を伴う流感の治療に効果があると明らかにしています。でもエルダーベリーのエキスを買うか、このドライハーブで作ったお茶を飲めば良いでしょう。私はアメリカ産のエルダーベリーをイスラエル産の代わりに使うことにしています。
★★ ジンジャー(Ginger/Zingiber officinale ショウガ)
 ジンジャーに含まれる数種の成分(ジンゲロールとショーガオール)には動物実験ではありますが、せき止め作用、鎮痛作用や解熱作用が見られます。人間に同様の効果があることは証明されていませんが、私はこのジンジャーには咳を和らげる作用があると信じます。咳で困ったときには手軽な方法としてどうぞお試し下さい。
★★ レモン(Lemon/ Citrus limon)
 クリス・ホッブ氏のレシピーから:沸かした湯にオーガニックレモン(有機栽培のもの)の皮をティースプーン2杯、タイムをティースプーン半分にセージをティースプーン1杯を入れ、15分浸しておきます。それにレモン半分のジュースと蜂蜜ティースプーン1杯を加えます。ほとんどレモネードですが、これは試してみる価値があります。実際、一日2,3回飲んでみて下さい。(ホッブス氏の言うには、オーガニックのレモンを使う理由は普通の柑橘類は通常殺虫剤ワックスが使われ、これを洗い落とすことは不可能だからということです。
★★ リコリス(Licorice/ Glycyrrhiza glabra カンゾウ)
 このハーブの多くの有益な性質の中で、リコリスは粘膜を鎮めたり、咳や喘息の治療に長い歴史があるのです。リコリス茶にして飲むのもよいし(沸騰したお湯カップ一杯当たりリコリスの乾燥した根をティースプーン1杯を加える)他の鎮咳効果のあるハーブに加えて使うのも良いです。
 リコリスとそのエキスは普通使う量では安全なものですが、一日カップ3杯までにしておくこと。長期間の使用や大量の摂取は頭痛、だるさ、ナトリウムと水分の停留(むくみ)、カリウムの過剰排出、高血圧の原因になります。
★★ スリッパリー・エルム(Slippery elm/Ulmus rubra アカニレ)
 米国FDAはこのスリッパリー・エルムには安全で有効な咳の鎮静効果があることを認めています。この植物の樹皮には大量の粘液物質を含みこれがのどの炎症を鎮め咳止め効果を発揮します。スリッパリー・エルムの入った咳止めの甘味入りの錠剤がありますが、このドライハーブで作ったお茶を飲むのも良いです。
★ アニス(Anise,aniseed /Pimpinella anisum アニシード)
 ドイツのコミッションEではこのアニシードを気管支管のたんを取り除く去たん薬として認めています。お茶として飲むにはつぶしたアニシード(種実)ティースプーン1,2杯をカップ一杯の沸かしたお湯に入れて作ります。10分から15分置いてから濾します。朝と晩にカップ一杯が適量です。
★ Burnet-saxifrage(Pimpinella major 和名不詳)ピンクの花をつけるセリ科の植物
 ドイツのコミッションEは上部気管支の慢性的な炎症に対してこの植物の根をティースプーン3から6杯で作ったお茶を飲む方法を勧めています。いくつかの研究でこの植物の成分には去たん作用と咳止めに効く物質を含むことがわかっています。
気管支炎やしゃがれ声、大声を出したあとののどの痛みなどの治療に広く使われています。
★ マーシュ・マロウ(Marsh mallow/Althaea officinalis ウスベタチアオイ)
 マーシュマロウの根のエキスには咳とのどの痛みに効く有効な植物性粘物質が多く含まれます。コミッションEはマーシュマロウの根はのどの粘膜の荒れや乾燥咳に関する症状の治療に有効だと勧めています。
 使うときはカップ一杯の湧かしたお湯に、乾燥ハーブをティースプーン2杯をいれてお茶にして飲みます。
★ マレイン(Mullein/Verbascum thapsus ビロードモウズイカ)
 マーシュマロウのように、マレインはのどを和らげる粘物質を含有しています。サポニンと呼ばれる化学物質で去たん効果があります。コミッションEは咳の治療にこのマレインの黄色い花を使うことを勧めています。私の家族は咳止めにマレインの葉を使ってきましたが、この方法は安全で効果的だと考えています。
 お茶にしたものをよく濾して軟毛を取り除き、レモン、蜂蜜や好みのハーブを加えて独特のニガ味を薄めて飲むと良いでしょう。
★ プリムローズ(Primrose/ Primula veris イチゲサクラソウ)
 コミッションEは咳の対策に乾燥したプリムローズをティースプーン1,2杯から作ったカップ一杯のお茶を摂ることを推奨しています。
 注意として、他の植物“イブニング・プリムローズ(メマツヨイグサ)”とは違う植物です。
★ スティンギング・ネトル(Stinging nettle /Urtica dioica セイヨウイラクサ)
 この植物のお茶は咳に対して定評のあるものです。このネトルは風邪、百日ぜき、結核の治療薬として使われた長い歴史を持っています。試してみる価値は十分にあるでしょう。この植物の葉で作ったお茶は咳や花粉症にも効果があるようです。
★ サンデュー(Drosera/ 各種ありモウセンゴケ)
 ここにコミッションEが太鼓判を押したハーブがあります。このハーブの乾燥したものティースプーン1,2杯を沸かしたお湯に入れてお茶にしたものを試してみて下さい。気管支炎、頑固な咳、百日ぜき、特に子どもの咳にサンデューを一日一回飲んで下さい。
 現代の研究ではこのような用途に使うことが確認されていて、去たん薬、咳止め、気管支の荒れを和らげるために有効なことが明らかにされています。