ご注意
まずこれをお読みの皆様にお願いですが、現在医療機関で治療を受けられている方は、必ずかかりつけの医者に相談の上お試しください。また、自己診断は禁物です。まず医療機関の診断を受けた上でご自分の体調を正しく把握してください。
 60歳台の私がこの様に健康で生活できること自体が最高の喜びなんだと、しみじみ感じるようになりました。正直に言うと65年の間にはかなりつらい時期もあった事もあります。そうです、私の家系の病歴にはかなり不安なものがあるのです。父と二人の兄弟はすべて結腸ガンか胃腸のガンで65歳で亡くなっているんです。しかも、彼らが仕事から引退した年齢に病魔に襲われた事もあって、私は健康に関して色々作戦を実行することに決心したんです。ことによるともし私が引退しなければ、彼らと同じには死なないかも知れません。
 私は現在USDA(米国農務省)に勤務している事が、66歳まで結腸ガンにならずにすんでいるのかも知れません。事実、なぜ親父やおじさんがガンにかかって私がガンではない理由を考えて見るんです。みんな若い頃はアラバマの農家ですくすく育ちました、労働で日に焼けたあとの食事は高繊維食物、しかも低脂肪の農産物が主食でした。大きくなって都会に出て保険のセールスマンで成功するとその食事は肉とポテトに変わりました。(ポテトよりも肉をたくさん食べたそうです。)食生活の変化が彼らをガンに導いたのではないかと私は考えています。そんな単純なことが原因だったりするんでしょうか。特に悪影響を与えたのは、食卓から穀物パン、エンドウ豆、キャベツ、緑豆、ライマビーンやサラダ野菜、カブなど少年期によく食べたものをすべて見捨ててしまったことなんです。反抗的な私は肉食を切り捨て、親父が切り捨てた高繊維食、低脂肪の食事に戻してしまいました。結局、植物から摂った栄養成分がガンを予防する最良の薬になっているようなのです。
予防医学としての食物

 この項でも他の項のようにたくさんの効果のあるハーブの話が出てくると期待される方も多いと思いますが、実はこの項はそんなに簡単な話ではないようなのです。私の好きなハーブの定義のなかに、「治療の効果のある植物は全てハーブ」というのがあります。治療するパワーを持った植物という見方をすれば、相当の数の植物がハーブと呼べてしまうでしょう。日常の食物の多くがその定義に含まれることになりますね。
 ガンの予防のために食べ物を考えれば、一つの鍵は出来る限り幅広い種類のフルーツや野菜を食べるということになるでしょうか。その意味では、もしガンのリスクを低くしたければ、あなたの日常の食生活の中で肉や乳製品を取り除くか最小限度に抑えて、そしていわゆるハーブで食事の内容を組み立てることになるでしょう。だから個々の植物の一つを取り上げて論じる事は皆さんにガン予防の為のハーブの方法論の間違った視界を与えることになってしまうんです。
 私はむかし、栄養士が「粗質食料(繊維素の多い、栄養素が少なくかさの多い食物)を摂ることが重要なポイントだ」と指摘する以前にすでに「高繊維食物オタク」の一人でした。実際は、私の毎日の食事は結局通常の高繊維食物の食事よりもさらに繊維質の多いものになってしまい、このメニューはUSDA(米国農務省)の5研究課題に参加したボランティアの人たちへ食事メニューにも使われることになりました。もちろん私はその研究の被実験者の中の一人でもありました。この研究では残念ながら父の高脂肪の食事がガンの直接的原因とは証明できなかったし、植物をベースにした私の食事がガンの統計に加算されずにすんだとも言えなかったのですが。しかし研究の結果はとても明快でした。脂肪と肉の消費が増加するにつれて、ガンの統計の値も上がるのです。反対に、フルーツと野菜の消費が上昇すると摂取する脂肪の量が減り、繊維質と植物性化学物質の量が増えることでガンの比率が下降していたのです。
見当違いの闘い

 「全米癌協会」(NCI)はこれまで30年の間、ガンとの闘争に明け暮れてきました。1996年までは毎年ガン死亡者はNCIの統計で上昇し続けています。増加の分のいくらかは治療技術の向上で心臓疾患や心臓発作で亡くなる患者が減ったため、ガンが発症するまで長生きする人が増えたとも言えますが。
 長年、数々の新しい化学療法(抗ガン剤)が開発されてきました、あるものはよく効き延命効果もありますが、残念ながらガンを完治することはまだ出来てはいないのです。
 それら化学療法に使われる抗ガン剤の中で非常に効果の高いものにも植物から作られているものもあり、たとえば卵巣と乳ガンの治療にはタキソールという商品名のユーの木【Pacific yewtree/Taxus baccata イチイ(ユーは5000年前の凍結ミイラと一緒にアルプス山脈から発見された。弓や斧の材料にも使われていた。)】から作られた抗悪性腫瘍薬があるし、エトポジドという薬剤は精巣ガンや肺ガンのヘ治療薬でメイアップル(mayapple/podophyllum peltatumハッカクレンの一種)が原料、またホジキン病という非常に怖いリンパ腫の一種や白血病、リンパ腫などに使われるビンブラスチンとビンクリスチンというビンカアルカロイド系の二種類の抗ガン剤はマダガスカル・ペリウィンクル(Madagascar periwinkle/Catharanthus roseus ニチニチソウ)から作られているのです。
(訳者注:強い副作用をもつハーブもあるので個人の判断での使用は絶対におやめください。たとえばニチニチソウは人にも家畜にも有害で、抗ガン剤として投与されても健康な細胞にも悪影響を与える副作用があります。)
 私が見る限り、NCIのガンとの取り組みは余りよい方向へは行っていないようなのです。税金でまかなっているNCIの研究費用の大部分が化学療法の開発費用に向けられていて、ガン予防のためにの予算はお寒い状況です。化学療法こそが彼らの雄大な計画の目的地なのですが、これは本当の治療ではないのです。その目的はいつも癌患者の平均的な余命をほんのわずか延命するためのものでしかないのです。数ヶ月または数年の延命効果があるにしろその化学療法に使われる抗ガン剤の持つ強烈な副作用のために患者さんの余命生活の質が大変低下することがあります。
 1977年から82年まで、私はNCIのガンのスクリーニングプログラムに参加していました、ガンの治療効果のありそうな数千もの植物の化学成分を何年も調査研究しました。同じ頃に私はNIH(国立衛生研究所)の中でDFP(食生活改善プログラム)の設置にもかかわっていて、ここではガンの予防効果のある植物化学物質を取り入れた健康を維持する食生活の改善を試行する事が目的でした。この食生活の改善が持つガン予防の可能性の方が、医薬品を開発するプログラムよりも研究に値するのではないかと大いに感じたものです。明らかに、ガン予防プログラムは治療プログラムよりもたくさんの命を救え、しかも研究のためのコストも小さくてすみます。30年間ガンの治療にかけた国の膨大な予算が費やされた反面、ガン予防プログラムへの予算はごくわずかです。私の研究したガンに関するほとんど全ての文献は予防に関連したものでした。
 そうです、ぜひとも効果的で穏やかな治療法も開発したいのですが、それより大切なことはもっと経済的にこの病気の予防のために仕事をすることなのです。
発ガンの可能性を閉め出すライフスタイルの要点

 ガンの予防に払う生活上の努力は特別のものでなく、多くの他の疾病に対する予防法と大いに重なるところがあるのです。あなたのすべき努力は次の項目です。
● 食生活をバラエティに富んだものに、単調はだめ
● 全粒穀物をもっと、精製砂糖は減らす
● 天然着色料にこだわり、人工着色料は避ける
● ハーブスパイスを使用、人工香料、味付けは避ける
● より天然で丸ごと素材を利用、加工・レトルト食品は極力避ける
● エストロゲン(女性ホルモン)は植物から摂取、合成ホルモンは避ける
● もっとフルーツと野菜ジュースを飲む、アルコール飲料は少な目に
● より、清浄な空気の中ですごし、タバコと汚染された空気から逃げる
● より平常心でストレスから逃げる
● もっと運動を、テレビはほどほどに
● 緑の多い自然歩道の公共施設をあるき、舗装道路は迂回できれば…
● もっとオーガニックの庭園や牧場で過ごし、農薬や殺虫剤から逃げる
● もっとハーブの薬を活用、「魔法の弾丸」現代医薬品を避ける
 20年ほど前でしょうか、長い間科学者の間で事実上の同意事項に達していたこと「食事内容にフルーツと野菜を多くするとガン予防の効果がある」。当時NIH(米国立衛生研究所)はこれを"5つの努力"(一日に5種類の野菜とフルーツをたべること)として国民に勧め始めたのです。またガン予防の専門健康雑誌がガンの予防に関して私にインタビューにも来たことを覚えています。私はガン予防についてのいくつかのアイデアを出したのですが、まず大盛りの緑色サラダかコールスロー(このキャベツサラダはうちの家族の大好物です)、または大鉢にタップリと盛りつけたミネストローネ(野菜などの実が多く濃いスープ)とガン予防に有効なハーブのサラダを勧めました。グリーンサラダやコールスロー、ミネストローネの作り方は皆さんがよくご存じですよね、「いろいろの種類の野菜を揃えるなんて面倒くさくて出来ない」なんて言わないでくださいよ。出来るだけ可能な限りあなたの食卓にたくさんの種類の野菜とフルーツを乗せるようにしてください。私の提案してきたサラダのレシピーの内容をもう少し詳しくご説明しましょう。
★★★ガンを予防するハーブサラダ
 サラダのレシピーの中心として民族植物学者ジョナサン・ハートウェル氏の著書「ガンの予防に有効な植物」の中で取り上げられている三千種類の植物からいくつかのハーブを選びましょう。ハートウェル氏の植物の半数以上がいくつかのタイプのガン治療に有効な成分を含有することがわかしました。(少なくとも試験管の中では)
 そこでお勧めのガン予防効果のあるハーブサラダの中身は、まずガーリック、タマネギ、アカトウガラシ、トマト、レッドクローバーの花(ムラサキツメクサ)、刻んで調理したテンサイ、生のカレンデュラの花、セロリ、生のチコリー(キクニガナ)の花、チャイブ(エゾネギ)、キュウリ、クミン(ヒメウイキョウ)、ピーナッツ、パースレーン(スベリヒユ)、セージなど。
 さらに、このサラダには当然ガン予防効果のあるドレッシングも使いたいところ。このドレッシングはフラックス(アマ)の食用油、イブニング・プリムローズ油、ガーリック、ローズマリー、レモンジュース、あなたが辛口ならばトウガラシを混ぜ込んで作ります。
 このサラダの開発をしてから15年後の1989年、NIH(国立衛生研究所)のハーバード・ピアソン医学博士がガン予防の為の食生活改善プログラムへ私の参加を呼びかけてきたんです。これは食べ物を操作して機能性栄養物(薬効の価値のある栄養物)の内容を高める最重要度の研究でした。この考え方は食べ物の中のガンにうち勝つ化学物質の量を増強ために、植物の遺伝子の操作とか、必要とする医薬効果の維持や増強するための必要な技術の開発を目指すものだったのです。ピアソン博士は私のもっていた食用植物とハーブのもつ医薬品としての植物化学物質のデータベースに非常な興味を持ったようでした。このデータベースの本には抗ガン成分の基礎的なデータが含まれていたのです。博士は専門家が多様な植物のガン予防に寄与する研究の発表会には必ず私に出席するように誘ってくれました。化学物質についての発表は私を大いに喜ばせたことを想像してください。友人科学者のプレゼンテーションはたとえばガーリックにあるサルファイド成分や、アカトウガラシのカプサイシン、柑橘系果実のリモネン、トマトのリコピンなどでした。彼らはガンと闘える可能性のあるフラックス(アマ)、リコリスやローズマリーのようなハーブを追い求めていったのです。その会議の後は、私のサラダドレッシングにローズマリーを加えたことは言うまでもありません。食生活改善プログラムの会議はとても実り多いものでした。そのプログラムにも興奮したし、この分野でNIHが5年計画で研究を続けると言うことでした。しかし、ピアソン博士がNIHを去ると、プログラムの勢いはは火の消えたようにしぼんでしまいました。
 幸い、食べ物の医学的可能性の研究は他の研究プログラムや団体で全国的に前進して来ています。後数年の後には、おそらくより多くの有効な研究成果を耳にすることでしょう。ある食物群と伝統的な医用ハーブにはガン予防も含めて治療の効力があるのです。