ご注意
まずこれをお読みの皆様にお願いですが、現在医療機関で治療を受けられている方は、必ずかかりつけの医者に相談の上お試しください。また、自己診断は禁物です。まず医療機関の診断を受けた上でご自分の体調を正しく把握してください。
 マルタはすらっとした活発な30歳台の女性で米国農務省(USDA)の医薬草研究所で一緒に仕事をした私のお気に入りの中の一人でした。私たちはUSDAと全国ガン協会と共同で抗ガン作用を持つ可能性のある植物を研究するプログラムに参加していました。マルタは森の中をハイキングするのがことのほか好きで、機会を見ては私も一緒にハイクしたものでした。ブカブカのカウボーイブーツを履いた足には、私の作った朝鮮人参のパッチを貼って楽しそうに働いていたその彼女を今でも思い浮かべます。その彼女が毎年千人に一人の割で死亡するゼンソクに罹るとは想像だにしませんでした。
ゼンソクはあなたの呼吸を止めます
 ゼンソクとは慢性の呼吸器の病気で症状としては端鳴(笛のような音の呼吸)、咳(セキ)、胸部うっ血、呼吸不全や発作に対する大きな不安感を伴います。毎年四千人以上の人々が重篤なゼンソク発作の合併症により死亡し、その数は1980年以来30%も増加している現状があるのです。その理由は解明されていませんが、ゼンソクによる小児の死亡は夏に多く、反面65歳以上の患者は冬季の死亡が多いと言われています。
 多くの人はこのゼンソクという病気を小児独特の疾病と見なしており、確かにこの病気は子供達の発症が続いています。1995年には、370万人の子供から青年期の患者がいましたが、1980年の240万人から鋭く急増しています。しかし、ゼンソクはどの年代でも起こりうる病気で、事実ほとんどのゼンソク患者は成人なのです。現在、およそ1,400万人の米国人がゼンソクにかかっています。この疾病にかかる費用は、治療費と生産性の遺失利益を合計すると毎年60億ドル以上と言われています。医学的にもゼンソクの原因が特定できず、またなぜ患者数が上昇し続けるかもわかっていません。私にも何ともいえません。でも、私たちの生活で化学物質に接する機会が多くなったり、ごく自然な食生活から遙か遠いところにいることにゼンソクが多くなった事と無関係とは思えないのです。大気汚染と屋内の汚染(有害物質の資材を使った建物)がゼンソク病の増加に大きく関わっていると私は信じています。
 ゼンソクの症状は気管支のけいれんにより引き起こされ、肺臓に導かれている分岐管が突然に狭くなってしまために起こります。ゼンソクと花粉症タイプのアレルギーとは全く異なる状況ではありますが、特に15歳以下の患者にはオーバーラップする部分があります。ゼンソクの子供達の90%がアレルギーを持っていて、それらのアレルギーがゼンソク発作の引き金になる可能性があるのです。気管支のけいれんがアレルギーにより引き起こされる理由はヒスタミンという化学作用がすべてのアレルギー症状のほとんどの原因で、同様にゼンソク発作の役目をしているようなのです。
 ヒスタミンのほかにもたくさんのことが発作の引き金になっているでしょう、過激な運動、喫煙習慣、呼吸伝染、産業用化学薬品、アスピリン、ペットの毛、屋内の化学汚染、多くの食べ物に添加された硫黄成分など。精神的ストレスも又ゼンソクに大きな役割を果たしています。強度の不安感(ストレス)は発作の引き金になると同時に、種々のストレスは一般的に喘息症状を更に重くさせます。
ゼンソクのための「緑の薬局」

 専門医はこのゼンソクの治療に各種の医薬品の中からテオフィリン(メチルキサンチン)を使うことで気管支平滑筋を弛緩させ患者の呼吸を確保します。気管拡張剤として知られるこれらの薬は吸入器としても使用されています。もしも私がゼンソクを患ったら、迷うことなく内科医の忠告にしっかり従うことにします。これはもしかすると致命的な病気なのかも知れないのですから。私の喘息の治療に、もしも医者がテオフィリンを使うことを勧めたならば、むしろ私は自然の産物の中から治療薬に使えるもの、例えばカフェインを最高に含む植物を選ぶでしょう。
"★"の数は効果の高さの指標です。
★★★コーヒー、お茶、カフェイン入りのコーラ飲料、ココア、チョコレート
 これら普通にある飲み物もチョコレートキャンディもハーブとして認められる植物からの産物です。他の成分と同様にカフェインを含有するものはすべてゼンソクを受け流す働きをします。
 ジョー・グレイドンは薬剤師で新聞へ記事を載せるコラムニストですが、かつて掲載された記事の中で、ゼンソク持ちの人が医薬品の手持ちがないときに咳に襲われてピンチの時、気管拡張剤の薬効のあるコーヒーを数杯飲むと書いていました。その記事が掲載されてから数ヶ月後、ハワイにハネムーンに出かけた時、くすりを忘れたゼンソク患者の新婚の女性から感謝の手紙を受け取りました。ハネムーンの最中のある時、ゼーゼー鳴る喘鳴が始まり、常用薬を忘れた事に気が付いた彼女は発作を更に悪くするパニックになりかけ始めたのでした。そのとき、彼女はあの新聞記事の「コーヒーが代用薬の働きをする」事をを思い出したのです。とっさに3杯のコーヒーを立て続けに飲んだ彼女。その発作の症状の喘鳴は静まり、ハネムーンはもとより彼女の命も救ったのでした。現実に、コーヒー、お茶、カフェイン入りの清涼飲料、ココアやチョコレートには思った以上のカフェインを含んでいます。
 伝えるところによると、現在主に使われている2種の天然抗ヒスタミン成分テオブロミンとテオフィリンはカフェインとともに使用され、ザンチネスと呼ばれる家庭医薬品として親しまれています。これらの医薬品は気管支けいれんを止める働きとともに、収縮した気管支の通りを良くするのです。
 上記の飲み物に含まれる抗ヒスタミンの成分の含有レベルはいろいろの条件で変化するようです。一般的にはコーヒー1杯には最高の含有レベル(カップ1杯でカフェイン約100mg含有)、反面ココア1杯と360mlの缶入りコーラにはコーヒーの50%が含有するといわれています。およそ50グラムのチョコレートバーにはコーラの半分弱ほどでしょうか。
 むろんカフェインや抗ヒスタミン剤のザンチネスは絶対に安全と言うわけではありません。コーヒージャンキーと呼ばれるようなコーヒー飲みなら知っていることですが、カフェインには不眠症と神経過敏症がつきものです。しかし、天然の状態の抗ヒスタミン成分は実際、製薬されたテオフィリンよりも副作用が小さいのです。
 小児科医の81%にアンケートしたある調査では、ゼンソク治療に医薬品を使用している子供達の経験する副作用について両親の大きな心配は特に夜眠れないとか集中力か続かないなどの症状なのです。多量の服用を伴う医薬品に依るゼンソク治療の副作用は頭痛、不眠症、興奮症、吐き気、食欲減退、胃痛や卒中を起こすことさえあるのです。
 この時点で、もしも私が脅威のゼンソクに罹ってしまったら、まずかかりつけの医者に相談するでしょう、そして指導された医薬品を服用し、それから補助的な意味で自然療法を試すことを考えるでしょう。
★★★エフェドラ(Ephedra/ Ephedra sinica シナマオウ)
 多くの医療植物学者はこのエフェドラはもっとも古くから知られる薬として有名なものです。これをマオウと呼ぶ中国では数千年の間ゼンソクの治療や呼吸器系の病気に取り入れてきました。
 このマオウの有効成分を科学的に分離し、エフェドリンと名づけたのは1887年のことです。第1次世界大戦が終わるまで知られずにいましたが、戦後米国の医者がその成分を処方し始めました。そのとき、医者はこの抽出成分の生理作用に気管拡張作用や鼻づまり中枢神経系に刺激することに気がついたのです。プソイドエフェドリン(フェニルエチルアミン類系)はすでに一般的になってきている鼻うっ血除去剤の売薬です。この種の薬として"サダフェド Sudafed"という名前が米国では有名です。
 化学成分のエフェドリンやプソイドエフェドリンと同様エフェドラも含めてそれらの副作用として気になる症状は不眠症や不安感、高血圧への悪影響が挙げられるでしょう。だからこのハーブの使用には良く注意してください。実際、もしも多量に服用したとき、予期せぬ事が起こり得るのです。医学文献にはエフェドリンによる精神障害の報告が20ケース発生しており、米国FDA(米国食品医薬品局)ではこのエフェドリン系の栄養剤などの流通・販売に歯止めをかけています。それでも十分に注意して使えばこのハーブはゼンソクの管理にも大変有用なものになるはずです。
 薬屋で売っているこの種の有効成分を配合した売薬を飲む代わりにこのドライ・ハーブで作ったハーブ茶を飲むときには十分配慮することをお勧めします。お茶を作るとき、エフェドラをティースプーン平らに1杯、または健康食品店か薬局から買ってきたチンキ液を使うときにはティースプーン半分から1杯の量を守ること。過去数年の間に、このハーブの興奮作用を経験したいための激しい乱用のために幾人かの人が死亡しているのです。
 このように興奮作用を持っているので、このハーブを子供のゼンソク治療に使うときには必ず小児科医とよく相談してからでなくては使ってはいけません。
★★★スティンギング・ネトル(Stinging nettle /Urtica dioica セイヨウイラクサ)
 四百年前、イギリスのハーバリスト、ニコラス・カルペパー氏は「ジュースやお茶に使ったネトルの根や葉は、肺への通路のパイプを拡張する安全で確実な医薬効果がある」と主張しています。長い間、オーストラリア人はゼンソクの良き治療薬にネトルを視野にいてきました。オーストラリアではこの根や葉のジュースを蜂蜜や砂糖で味付けして日常の飲用にしていて、これが気管支系のトラブルの解消に役立つと信じられています。でも、アメリカでは5年ほど前に科学者が"ネトルには抗ヒスタミンの効能がある"と公表するまでほとんどこのハーブを見過ごしていました。
 現在、ネトルは花粉症やゼンソクの対策に徐々に認められてきています。友人でもあるアレルギーやゼンソクの患者さんたちが私の農園に来て、必ず掘り返して収穫するのがネトルの区画なのです。(あなたがネトルの畑で収穫するときには手袋を用意してください。でもネトルの葉の鋭いとがった毛は調理すれば消えてしまいます。)
★★アニス(Anise /Pimpinella anisum アニシード)とフェンネル(fennel/Foeniculum vulyare ウイキョウ)
 ギリシャ人はこれらのハーブからお茶を作り、ゼンソクや呼吸器系の病気に役立てているそうです。これら2種のハーブ両方に気管支の分泌の緩和作用を助ける化学物質のクレオソールとアルファ・ピネンが含有しているのです。
 フェンネルの種子(実はフルーツなのです)にはアルファ・ピネンが8,800ppmも含まれていました。皮肉にも、呼吸器系のトラブルに伝統的に使われているにもかかわらず、アニスはスーパースターとは呼ばれていないのです。それはこのアニスのアルファ・ピネンが360ppmしか含有していないからです。ほかのたくさんの植物がこの成分をたっぷり含んでいるし、ゼンソクの救済も期待できるものがあるからです。効果のある順に挙げていくと、パースリーの種子、コリアンダー、ジュニパーベリー、スイートアニー、カルダモン、サッサフラス、ホースバーム、ジンジャー、チャイニーズ・アンゼリカ(トウキ)、ディル、タラゴンやヤーロウなどがありますね。
 必要なハーブをミックスして自分用のゼンソク茶にして、これに更に少々のリコリス(カンゾウ)を加えると自己免疫力を強める効果も得られます。
★★リコリス(Licorice/ glabra カンゾウ)
 リコリスはのどの荒れをなだめたり、しばしばのどの痛みやセキ、ゼンソクの治療に推奨されています。リコリスとこのエキスには度を超さない普通の使用量(1日3杯までの飲用)ならば大変安全なものとされています。しかし、長期間の使用や過度の量の摂取は頭痛、無気力、ナトリウムと水分の分泌閉止、カリウムの過度の流出、高血圧の原因になるおそれがあります。
 もし、ゼンソクの管理のためにリコリスを定常的に使いたければ、成分のグリチルリチンを減量調整(DGLE)したエキスを使うことで、危険を避けることができます。このDGLEは特に海外で簡単に手に入れることが出来ますが、もちろん米国内でも入手可能です。私はハーブティにリコリスの乾燥した根の一片を落とすなど、控えめに使っています。
★ ギンコー(Ginkgo/Ginkgo biloba イチョウ)
 数千年のむかしからアジアの伝統療法師はギンコーの葉の抽出エキスをゼンソクやアレルギー、気管支炎、咳止めの治療に使ってきました。現在、ギンコーは西欧地域でも年輩の人たちにとても有効なものとして一般的になっていて、脳への血流の増加、加齢に伴ういろいろな疾患や発作の治療に用いられています。中国ではいまでも主にゼンソクの治療に使われています。
 ギンコーが効くのは気管支けいれんの引き金の役を演じる血液中のタンパク質つまり血小板活性化因子(PAF)の働きを抑制するためと考えられています。
 ゼンソクの患者が薬効を得るために使う量は、一回に付き生葉50枚食べなければなりません。私は商売柄、人の食べない植物もたくさん食べてきましたが、このギンコーの葉だけはたくさん食べないように注意しています。
 このハーブを使う最適の方法は50:1の濃縮エキスを買うことです。(50キロのイチョウの葉から1キロのエキスを抽出)健康食品店や一部の薬局でギンコーエキスを入手できるでしょう。その際は必ず説明書の指示に従って服用すること。標準的な抽出エキスを1日当たり60から240ミリグラムの範囲で摂りますが、これよりも多量に摂ってはいけません。大量の服用は下痢や過敏症、不眠になる可能性があります。
★トマト(Tomato /Lvcopersicon lycopersicum)柑橘系果実やビタミンCを多量に含む食べ物
 40に及ぶ質の高い研究で明かされたビタミンCの医療的効果は、1日約1000ミリグラムの摂取でゼンソク発作、気管支けいれん、端鳴、気管支感染症、鼻づまり、なみだ目ほかのアレルギー症状の予防になるといっています。どうしてなのでしょうか?
 ビタミンCはヒスタミンの放出を抑制するのです。ビタミンCを高濃度含む植物をたくさん食べること、柑橘系果物やトマトだけでなくベルペッパー(ピーマン)やストロベリーのたぐいのものも含めましょう。それに栄養剤もありますね。柑橘系の果物はすばらしく、ビタミンCの宝庫だけでなくフラボノイド(植物性色素)も含有するのです。この物質もまた、ヒスタミンの放出を抑えて、ゼンソク関係も含めてアレルギー症状に歯止めをかけてくれるのです。
★ 関連するハーブ類
 抗ヒスタミン成分に関連する私のハーブ資料を見渡すと、触れておいた方がよい価値あるハーブがいくつかありました。お茶、フェンネル、カイエンペッパー(チリペッパー)には少なくとも6種類の抗ヒスタミン成分が含まれます。オニオン、コリアンダー、ベルペッパーには5種類。4種類がもっとも多くて:キャベツ、カカオ、ニンジン、クランベリー、ホシブドウ、なす、グレープフルーツ、オレンジ、オレガノ、セージとトマトなど。
 抗ヒスタミン成分がもっとも多く含むハーブを探してみると、リコリス(カンゾウ)とお茶がダントツの勝者でした。カカオ、カルダモン、コーヒー、コーラ、オニオンとパースレーン(スベリヒユ)などは比較的豊富ですね。以上あげたハーブを使って抗ゼンソク料理をつくってはいかがでしょうか。
 オレンジ・グレープフルーツ・クランベリーのフルーツサラダのフェンネル添えなどはどうでしょう。さもなければオニオン・トマト・セージと和えたナス料理は?
 最後に、日本のわさびは試してみる価値ありますよ。日本人はこのわさびを欧米人がホースラディッシュを好むように日常の香辛料にしています。この香辛料は確かに副鼻腔をきれいにしてくれますね。ある研究では1日スプーン一杯でアレルギー、特に花粉症を和らげるといっています。この結果はゼンソクの管理にも効果があると、物語っているようです。もしも私が喘息患者だったら・・・ワサビを試します。米国内の食料品店でオリエンタル食品のコーナーに行けば見つかります。使い方はホースラディッシュと大体同じ。クラッカーに軽くまぶしたり、ドレッシングに混ぜ込んでおくか、日本人が寿司に使う方法もあります。お好みの方法でよいですが、ワサビは特別に辛いです。辛いものが嫌いならば、ゼンソクのために無理して使うこともないでしょう。
★ ビタミンB6
 UCLAの臨床医であり、代替医療の本の著者でもあるメルヴィン・ウェルバッハ助教授は、都市部に暮らすゼンソクを持つ子供たちへの薬の量を毎日ビタミンB6を200ミリグラム同時に投与することで、それらの薬を減量する事が出来たと述べています。成人では頻発する激しいゼンソク発作を50ミリグラムのビタミンB6を1日2回摂取することで発作を軽減した経験をしたそうです。B6の一日必要摂取量は2ミリグラムで必要以上の大量投与は神経系システムに影響を与えるとい言われています。
 もしも私がゼンソク患者だったならば、おそらくB6を試して見るでしょうが、その場合にはB6を使うかどうかは、かかりつけの医者に相談するでしょう。