ご注意
まずこれをお読みの皆様にお願いですが、現在医療機関で治療を受けられている方は、必ずかかりつけの医者に相談の上お試しください。また、自己診断は禁物です。まず医療機関の診断を受けた上でご自分の体調を正しく把握してください。
 その女性は30歳代で、妊娠もしていないのに6ヶ月も生理がなかったのです。医者は全身をくまなく検査、もちろんガンや子宮内膜症なども疑ったのですが、疑わしいところはありませんでした。
 無月経症:これは当然あるべき周期的に起こるはずの女性に見られる生理の途絶に対する医学用語ですが、なにか体内で良くないことが起きている兆候なのです。原因には何か精神的なストレス反応か又はホルモンの不均衡やもっと深刻な原因かも知れず、しばしばその原因を正確に指摘するには時間のかかる場合が多いようです。
 やけになったこの女性はワシントンにある心身健康研究所の紹介で私の所に電話してきたのでした。彼女の想像ではそれまで薬物治療で飲んでいた体内の女性ホルモンのエストロゲンのレベルを変える作用のある薬が原因ではないかと思っていました。
 私から彼女への忠告はエストロゲンを通常レベルに戻る働きのある植物性エストロゲンと呼ばれるエストロゲンに類似の成分を含むダイズやワイルド・ヤムなどの多くの植物性食品を取ることでした。さらにチェストベリーについても触れて、このハーブは通経作用の働きが大きいことで評判が高いと説明して上げました。納得した彼女は早速チェストベリーと植物性エストロゲンを試してみると言って電話を切ったのでした。数ヶ月後に、彼女から電話があり、実行した結果にとても満足出来たとのことでした。
無月経症のための「緑の薬局」

 月経を促す作用のあるハーブは、通経薬(Emmenagogues)として知られています。現代医学の発達する前の時代には女性は2つの理由で通経薬を使っていたようです。一つは朝に飲む避妊薬のような使われ方で、他に有効なものが無かったようです。もう一つは無月経症の治療のため。通経薬は今や避妊のためには必要ありませんが、無月経症のためにはいまだに必要とされているのです。数百ではないにしろ数十種の通経作用のあるハーブや植物の化学物質が私の手元の資料にあります。
 あなたや親しい人に無月経症の人がいれば、かかりつけの医者によく相談してから試してみるべきです。病院での標準的な治療方法はホルモン療法になりますが、この方法は多くの場合精密な観察が必要なので大変やっかいな方法で結果も思わしくないようです。私の経験では、通経薬でもよく生理が始まることもあり、それはこの薬の服用で精神的な安心感も得られるのではないかと考えられます。
 あなたの担当の医者がホルモン療法を行う前に、安全でおだやかな効き目のハーブを試して見たい事を相談されることをお勧めします。
私のハーブ・データベースから、有効なものをいくつかご紹介します。
"★"の数は効果の高さの指標です。
★★チェストベリー(Chasteberry/Vitex agnuscastus チェストツリー、イタリアニンジンボク)
 ある小規模な研究でのことですが、無月経症の女性20人ほどに毎日40滴のチェストベリーのエキスを投与し、6ヶ月間経過を観察しました。投与を完了した15人のうち10人の生理周期が復活したのです。
 無月経症は主にプロラクチン・ホルモンの血中濃度が上昇することに関係あります、そしてプロラクチン量を減少させる医薬品により正常な生理周期を取り戻すことが出来ます。
 (訳者注:プロラクチンは脳下垂体から分泌されるホルモンです。体の中のいろいろなホルモンの産出量をコントロールしています。卵巣からでる女性ホルモンとか、精巣から出る男性ホルモン、すい臓から出て血糖値をコントロールしているインスリン、副腎から出る副腎ホルモン、甲状腺から出る甲状腺ホルモンなどの産出量がコントロールされています。プロラクチンも下垂体から出ています。)
 チェストベリーにはそれらの医薬品と同等の振る舞いをするのです。標準的な投与量は果実から抽出されたチンキでは一日20ミリグラム以内です。ドイツではハーブ療法が広く利用され、医者もしばしば治療に取り入れて居ます。
 ドイツでは無月経症の医薬品に(フェミサナFemisana:ドイツでの商品名)が一般的ですが、これはチェストベリー果実の抽出チンキにグレーター・セランディン(ヨウシュクサノオウ)、ブラック・コホシュ、パスクフラワー(セイヨウオキナグサ)を加えたものです。
★★ ブラック・コホシュ(Black cohosh/ Cimicifuga racemosa アメリカショウマ、ショウマ)とおよびブルー・コホシュ(blue cohosh /Caulophyuum thalictroides ルイヨウボタン)
 この二つのハーブはかつてアメリカ・インディアンの女性が婦人科の病気の時に好まれるハーブでした。ブラック・コホシュには女性ホルモンのエストロゲンのような作用があり、ブルー・コホシュには子宮収縮を活性する効果があるのです。
★キャロット(Carrot/ Daucus carota ニンジン)
 ドイツ系米国人はワイルド・キャロット(クイーン・アンズレース、ノラニンジン)の種子に通経薬や事後避妊薬の作用を認めていたようです。インディアンの研究者達は動物実験ですがキャロットの種子に抗着床作用があることを確認しています。
★セロリ(Celery/Apium graveolens )
 セロリの種子には生理を始める引き金になる成分が含まれています。
★ディル(Dill/Anethum graveolens イノンド)
 ディルに含まれるアピオールという成分には、「医学的見地から妊婦には使用してはいけない」と私が尊敬するハーバリスト達が警告を発しているほどの大変強力な通経作用があります。(ディルのピクルスを食べたからと言ってパニックになる必要はありません。大丈夫です。)
もしも通経効果を得たければティースプーン2杯程度のつぶしたディルの種子でお茶を入れて飲めばいいでしょう。
★マーシュ・マロウ(Marsh mallow/Althaea officinalis ウスベニタチアオイ)
 このハーブには4%ものベタインという植物性エストロゲンを含み、通経薬としてビート(サトウダイコン、テンサイ)やニンジン、チコリー(キクニガナ)、オーツ、オレンジ、ヤローなどに含有します。マーシュ・マロウとヤローのお茶を試してみると良いでしょう。
 ベタインをたっぷり含むおいしい野菜料理には蒸したニンジンやビートを添えたチャード(フダンソウ、トウジシャ)などいかがでしょうか。
★ターメリック(Turmeric/Curcuma longa ウコン)
 中国・インドの伝統的な民間医療者は無月経症の治療にはターメリックを勧めているようです。その安全性に疑いの余地はありませんが、私はこの方法が有効であるかは保証しかねるところがあります。でも試してみる価値はありそうです。
 治療に使うにはターメリックをタップリ使ったカレーにするか、それとも濃いお茶にして飲んでもよいでしょう。
★他のハーブ類
 無月経症の治療の役に立つその他のハーブとしては豊富で広く行き渡っているものだったら、私がほとんど調査の苦労なしに皆さんに紹介できるものがたっぷりあります。以下に紹介するハーブであなたの手元にあるハーブをどれでも数種類併せて熱湯を注ぎ15分ほど浸してから飲んで下さい。
 列挙するとアグリモニー(セイヨウキンミズヒキ)、アンゼリカ(ヨーロッパトウキ)、ベタニー(チョロギ)、カラミント、キャラウェイ(ヒメウイキョウ)、キャットニップ(イヌハッカ)、コリアンダー(コエンドロ)、シアントロ(コエンドロの葉)、クミン、チャイニーズアンゼリカ(トウキ)、フェンネル、フィーバーヒュー(ナツシロギク)、ジンジャー、ホアハウンド(ニガハッカ)、ヒソップ(ヤナギハッカ)、ジュニパー(セイヨウネズ)、ラベンダー、レモンバーム(セイヨウヤマハッカ、メリッサ)、ラビッジ、マリゴールド(クジャクソウ)、マジョラム、マザーワート(メハジキ)、ナッツセッジ(ハマスゲ)、オレガノ(ハナハッカ)、パースリー(パセリ)、ペニーロイヤル(ミント)、ローゼル(ローゼリソウ)、ローズマリー(マンネンロウ)、ルー(ヘンルーダ)、サフラン、タンジー(ヨモギギク)、タラゴン(エストラゴン)、タイム、チャービル、ウインターグリーン(トウリョクジュ)、ワームシード(シロザ)、ヤロウ(セイヨウノコギリソウ)、イランイランなど。
 ほかに蛋白質を分解する酵素を持つフルーツや根茎は民間伝承の通経薬として特記しておきます。それらにはイチジクやジンジャー、パパイヤ、パイナップルが挙げられます。
***訳者のお薦めとして***
マカ(Maca/ Lepidium meyenii マカ)
 ペルー原産のマカは4,500メートル以上の高地の厳しい環境の中で鉄、亜鉛などのミネラルが豊富な限られた土壌で栽培されています。マカにはリジンとアルギニン酸という必須アミノ酸と豊富なミネラルを含有しそれらは生理不順や更年期障害の原因の女性ホルモン(特にエストロゲン)の分泌の低下を防ぐ効果があります。エストロゲン(卵胞ホルモン)は女性生殖器の発育を促進させるホルモンです。