ご注意
まずこれをお読みの皆様にお願いですが、現在医療機関で治療を受けられている方は、必ずかかりつけの医者に相談の上お試しください。また、自己診断は禁物です。まず医療機関の診断を受けた上でご自分の体調を正しく把握してください。
 私のハーブについての専門知識を知っていて、重大な症状やいろいろのことで助けを求めてくる方々からの相談に、そんなに無茶苦茶な内容の問い合わせ電話はありませんでしたね。そんな中の私の遠い親戚の人から電話がありました。
 彼女の72歳になるお母さんは肺気腫でした。家族のある友人は“肺の為にもっと酸素を取った方が良い”という考えで“食品工業用の過酸化水素”を勧めたそうです。患者のドクターがこの話を聞くとカンカンに怒ったそうです。親戚の人は過酸化水素が効くのかと私の考えを聞きたかったようですが、よくわからないと言わざるを得ませんでした。私が知っていたのはこの液体が消毒・防腐剤で漂白作用があると言うことだけでした。やっぱりドクターが正しかったんです、過酸化水素はどうであれ良くない発想だったんだと強く感じました。
 わたしにはこの件に関してすこし感じるところがありました。いろいろの研究が示すように、いろいろの果物や野菜ハーブのもつ抗酸化成分が年配の方の共通の諸症状を含めた健康状態を癒す手助けが出来ることを私は大変に感動しているのです。抗酸化剤とは、体中の細胞にダメージを与える原因になるフリーラジカル酸素分子の高い活性力を中和するとても良い物質なのです。しかし、過酸化水素は抗酸化作用の反対の効果があるのでした。そうです酸化剤なんですね、体の中のフリーラジカルの数を増やして細胞のダメージを必要以上に増加させる意味があるのです。
 その医者の意見を聞いて、「防腐効果として使う以外には過酸化水素は使っては行けない」とその親戚に伝えました。それでもまだ、その質問は私に抗酸化剤と肺気腫との興味を引かせたのでした。私が構築した信頼あるデータベースを調べたところ、抗酸化作用の働きについての幾つかの面白い研究があるのでお話させて頂きたいと思います。
肺気腫はゆっくりとした窒息状態です

 肺の中のごく小さい気嚢(きのう)つまり肺胞にダメージが起こると、血液への酸素の供給と二酸化炭素の排出の転換能力が失われてしまいます。その結果、肺機能が乏しくなるのです。肺気腫の典型的な症状はとしては、状態が悪くなればなるほど激しくなる息切れです。呼吸するために常に苦労するので、胸部が樽型になります。進行した肺気腫では、酸素の強制補給が必要になりわずかの肉体的活動でも我慢することが出来なくなります。治療が困難な状態になるとしばしば致命的になります。
 肺気腫は慢性的な呼吸器系の炎症から生じます。喫煙はどんなケースでも原因になり得ますが、長期間のホコリ、空気汚染や化学物質の気体などの暴露も同様の役割を果たすでしょう。喫煙はまた似たような症状の慢性気管支炎の殆どの場合の原因になっています。
 慢性気管支炎は、気管支管の内側に並んでいる細毛という細かい毛が不要な粘液(タン) を吐き出す能力を失う症状です。不要な粘液が排出されないと厚く溜まって粘度が高くなり、それらが蓄積していくと肺気腫を悪化させる呼吸器系の刺激物になるのです。
 肺気腫と慢性気管支炎との疾患の組み合わせは慢性閉塞性肺疾患(COPD)として知られています。
肺気腫のための「緑の薬局」

 明らかに、この肺気腫や慢性気管支炎、COPDとつきあう最善の方法は喫煙の習慣を止めることなのです。一旦診断されると、肺気腫は逆戻り出来ません。それでも残った肺機能は、呼吸器系を刺激するものを避けたり、酸素を供給することで最大限に活性することは出来るのです。加えて、肺臓から有害な粘液を散らしたり、排出出来るハーブは特に役に立つのです。
"★"の数は効果の高さの指標です。
★★★ マレイン(Mullein/Verbascum thapsus モウズイカ)
 生薬の薬理学者で“生薬とハーブによる療法の科学的検証”の著者でもあるダニエル・モーレイ博士はビロード・モウズイカには肺気腫を含む呼吸器系の疾患への治癒力があると称賛しています。マレインには粘液を散らす成分が豊富なのです。
 わたしはマレインの風邪や流感、気管支炎への治療効果に深い感動を受けているので、もしも肺気腫にかかったらまず試してみるつもりなのです。
 乾燥させてつぶしたマレインの葉または花を沸騰したお湯カップ一杯にティースプーン1, 2杯を入れてお茶にして飲みます。飲む前に良く漉してください。モーレイ博士はモレインとアカトウガラシ、リコリスを混合したものも勧めています。
★★★ レッドペッパ(Red pepper /Capsicum トウガラシ、アカトウガラシ)
 イギリスの内科医アーウィン・ジーメント博士は受け持つ肺気腫の患者にはスパイスを利かせた食事を毎日摂らせたり、コップ一杯の水にホットペッパー・ソースを10から20 滴たらしたものを飲ませているそうです。2つの理由があるとのこと。第一に、レッドペッパーには細胞レベルのダメージから肺組織を守る効果のある抗酸化物の豊富な発生源なのです。第二に、粘液を散らして呼吸器系から除去することを助けるのです。レッドペッパーだけが去痰(タン)効果のあるスパイシーな植物とも言えないのですが。
 古代人は粘液を散らして肺からはき出すために辛いスパイスのガーリック、オニオン、ジンジャー、マスタードやホースラディッシュ(セイヨウワサビ)のすべてを使っていました。この中で一つでも全部でも使ってお茶にして飲むことをお勧めしましょう。
★★ カムカム(Camu-camu/Myrciaria dubia)と、ビタミンCが豊富ないろいろのハーブ
 研究用の話題作りには向いているビタミンCは粘膜を散らす特質があり、あらゆる種類の呼吸器系の症状への治療の助けになります。それだったら、カムカムには良い評価をつけないといけませんね、このアマゾンのフルーツにはビタミンCの含有率が世界で最高なのです。乾燥重量ベースで、ビタミンCが4パーセント近くも含有しているのです。出来すぎでしょうか?でもレモンでは0.56%、野菜にしろフルーツにしろビタミンC 含有率はカムカムに遠く及ばないのです。そうだ、カムカムがアメリカではまだ容易に入手出来ないことをお知らせしておかないと、でも数年以内にはポピュラーになるように頑張ります。
 ご近所の食料品店が取り扱うまではどうぞ柑橘系果実やベルペッパー、グァバ、ウォータークレスやビタミンCの含有率の高いフルーツでも野菜でもご自由に召し上がっていてください。ローズヒップやアセロラもとても良い供給源になります。
★★カルダモン(Cardamom/Elettaria cardamomum ショウズク)
 このハーブには去たん作用の高い成分シネオールがとても多量に含有しています。もしも肺気腫にかかったら、フルーツジュースや飲み慣れたお茶に粉末状のカルダモンを1,2杯加えて飲むと良いでしょう。
 ほかにシネオールが豊富なハーブとしては、(含有率の高い順に)スペアミント、ローズマリー、スイートアニー、ジンジャー、ラベンダー、ナツメグ、ビーバルム(セイヨウヤマハッカ)、ペパーミント、タンジー、ヤーロウ、シナモン、バジル、ターメリック、レモンの葉、ヒソップ、タラゴン、レモン・バーベナ、フェンネルなどが挙げられます。ユーカリは上記のリストのトップに置きたいのですが、別に次項でお話ししたいと思います。
★★ ユーカリプタス(Eucalyptus/Eucalyptus globules ユーカリの木)
 ユーカリの精油(エッセンシャルオイル)にはシネオールが大変多く含まれています。去タン効果が高いこのハーブはのどの痛みのトローチ錠や市販の胸部塗り薬にも使われている成分です。幾つかの研究ではユーカリを胸部塗り薬に使う効果は誤解ではないかと発表していますが。吸入したとき、ユーカリは鼻腔の冷感覚レセプターを刺激して鼻の通りを良くすると言われていますが、充血緩和作用(鼻づまり薬)は証明されていません。しかしながら他の研究では、シネオールにはこれを摂取すると去タン効果と充血緩和作用が発揮されると言っています。
 私個人としては、胸部塗り薬のことは忘れてもこのハーブの乾燥してつぶしたものを沸騰したお湯にティースプーン1,2杯入れて作ったお茶を飲むことにしましょう。一日最大カップ3杯までにしておいてください。
★★ リコリス(Licorice/Glycyrrhiza glabra カンゾウ)
 リコリスには9種類の去タン効果の成分と10種の抗酸化作用のある成分を含有しています。肺気腫になったらハーブのお茶に粉末錠の根茎部リコリスと甘味料を入れて時折飲むことにします。
【リコリスとそのエキスを通常の度を超さない使用では安全なものですが(お茶にして一日3カップまで)長期間または大量の摂取は頭痛、無気力症、ナトリウムと水分の滞留、カリウムの大量損失や血圧上昇を引き起こすことがあります。】
★★ペパーミント(Peppermint/Mentha piperita セイヨウハッカ)
 ペパーミントには9種類の去タン作用成分を含有しています。さらに、メインの活性成分のメントールには伝えられるところによると粘液を散らす効能があるとのこと。
 お茶にして飲んだりチンキやカプセルを使ってもいいですが、精油は外用に使うだけでこれを食べてはいけません。
★★ セネカスネークルーツ(Seneca snakeroot/Polygala senega ヒロハセネガ)
 ドイツのコミッションEというハーブや生薬の有効性や安全性を審査して政府に諮問する専門家集団(アメリカのFDAに相当するもの)は去タン剤としてセネカスネークルーツのチンキを1から2杯程度の摂取を勧めています。このハーブは肺気腫や気管支炎の治療に大変有効だと、ロンドン大学キングスカレッジの薬学博士であり「ハーブ生薬と植物薬学」の著者でもあるノーマン・ビセット博士も述べています。
★バジル(Basil (Ocimum basilicum メボウキ)
 バジルは去タン剤としての効果はそんなに広く知られてはいないのですが、この目的の為の大変有効な成分が6種も含有するのです。
 私、個人的にはペストウ(スパイシーなハーブで作るソース)が大好きなのですがこのハーブも使っていましたね。パスタソースにしてすばらしい風味のペストウは、ガーリック、生バジルなどから作りますが、私の意見ではこの両方のハーブの薬効をこんな風に取り入れるのはとても良い方法だと思っています。
★エレカンペーン(Elecampane/Inula helenium オオグルマ)
 大変尊敬されているイギリスのハーバリストのデヴィット・ホフマン氏は著書の「ハーバル・ハンドブック」の中でこのハーブには去タン効果や肺臓を保護する効果もあると述べていて私がこの病気になったらたぶんこのハーブを使ってみるでしょう。
 この乾燥ハーブをつぶして沸かし立てのお湯カップ一杯にティースプーン1,2杯入れ試してみてください。一日にカップ2杯までにしておくこと。エレカンペーンは苦みがあるのでレモンやリコリス、蜂蜜を味付けにしても良いし、この章で取り上げたハーブをミックスにしてお茶にしても良いでしょう。
★ オレガノ(Oregano/Origanum vulgare ハナハッカ)
 オレガノには去タン剤になる6種の成分を含有しています。バジルのように去タン効果は広くは知られていませんが、でもバジルのようにすてきな台所用ハーブですよね。
★ ティー(Tea/Camellia sinensis チャ)
 去タン剤用のティーと言えば、古来からある緑茶、黒茶には6種もの去タン効果のある成分が含まれ、その中のテオフィリンは肺臓の奥深くにあるタン粘液を取り去ってくれる薬効があります。それにカフェインも含有するので、ある研究では抗うつ効果も見られるとのこと。その興奮効果は肺気腫の患者さんにも元気を与えるのを手伝うかもしれませんね。