ご注意
まずこれをお読みの皆様にお願いですが、現在医療機関で治療を受けられている方は、必ずかかりつけの医者に相談の上お試しください。また、自己診断は禁物です。まず医療機関の診断を受けた上でご自分の体調を正しく把握してください。
 米国農務省( USDA )本部を少しぶらつくとどれだけのハーブに関する情報が手にはいるか驚くほどです。そこで働くたくさんの同僚がハーブについてのアドバイスや種々雑多な健康問題の解決策を私に話かけてくるのです。ある日、その中で最も保守的な考えの同僚の一人(彼は生薬に魅力を持つようなタイプの人ではないのです)が狭心症に有効なハーブの調合について私に尋ねて来たときには驚かされたものです。この病気にその同僚は数ヶ月間悩まされているようなのでした。その場で私はこの章で書いたような数種のハーブ(ホーソーン、とガーリック)について話したところ彼はとても感謝していました。その後彼の語ったところによると、一週間ほどジンジャーを続けたところ大変体調が良かったそうでした。これは私にとって新しい情報でした。ジンジャーは心臓にとって有益な結果になるコレステロールと血圧を下げる効果があることは知っていましたが、同様に狭心症にも有益であると言うことは正直知りませんでした。結局それを証明した彼が正しかったのですね。
 狭心症(angina pectoris)は胸部の不快感や圧迫感、痛みを特徴とする心臓疾患の一つの形です。安静狭心症では、痛みは激しいジョギングからゆっくりとした散歩までの、どんなタイプの運動の後にでも起こるのです。不安定狭心症では、痛みは安静時にもおそってきます。狭心症はアテローム性動脈硬化(アテロスクレロシス)に起因すると言われ、これはプラークと呼ばれる過剰なコレステロール結晶が冠状動脈に付着して狭窄状態になってしまうことが原因なのです。アテローム性動脈硬化は心臓の血流を減少させ、その結果栄養と酸素の供給不足を起こすので胸痛の原因になります。両タイプの狭心症、とりわけ不安定狭心症は心臓発作の大きなリスクを持つ人に特徴的に見られます。
狭心症のための「緑の薬局」

 狭心症の人は医療機関のケアが必要なのは当然で、担当する医師の忠告に従うことは極めて大事なことです。ニトログリセリンやアスピリンを携帯することも一般的に勧められますが、ほかにコレステロールと血圧を抑える処置もよく行われます。定期的な検査に加えて、役に立つ薬用ハーブもたくさんあります。しかし、ハーブ療法を試す前に、担当する医者と良く話し合うことは忘れないでください。
"★"の数は効果の高さの指標です。
★★★ ホーソーン(Hawthorn/Crataegus セイヨウサンザシ)
 ヨーロッパでは、ホーソーンの実は穏やかな狭心症の治療に広く使われています。広範にわたる研究でホーソーンのエキスが冠状動脈を拡張して心臓機能を改善ことを証明することに成功したのです。これは心臓へ送る血液と酸素を徐々に改善するからなのです。ホーソーンは心臓の健康にとっても有益な血中のコレステロール濃度を下げる効果もあり、またヨーロッパの臨床的な経験によると長期間使用しても大変安全なことがわかっているのです。プルド大学の生薬学名誉教授のバロ・テイラー博士の著書「私が選んだこのハーブ」の中でホーソーンの心臓への薬効はこのハーブの成分オリゴメリック・プロシアニジン(ポリフェノールの一種OPCs)という成分によるものと詳述されています。
 このハーブのさらに良い効果として冠状動脈の血管内壁をスベスベにしながら広げる効果のあるフラボノイドという名で知られる成分を含んでいるのです。ドイツの政府諮問委員会で薬用ハーブの薬効を研究する専門家達が、ホーソーンはいろいろの心臓疾患に有効であることを認めています。
 自然療法家達は標準的なエキス製品で毎日240から480ミリグラムの服用を推奨しています。ホーソーンは強力な心臓用の生薬なので、かかりつけの医師に相談無しには使わない方が良いでしょう。ホーソーンの花や葉、実はすべて生薬として有用なものです。
★★ アンゼリカ(Angelica/Angelica archangelica ヨーロッパトウキ、)とセリ科のハーブ
 カルシウム・チャネルブロッカーは標準的な抗狭心用の医薬品で、アンゼリカには同じ働きのチャネルブロッカーが15種類も含有しています。同じような成分はセリ科の植物のニンジン、セロリー、フェンネル、パセリ、パースニップにも含まれています。
 もしも私が狭心症だったら、ニンジン、セロリ、フェンネル、パセリとパースニップ全部に水少々とスパイスを加えてジュースにして飲んでしまいますね。ベジタリアンが心臓病の罹患率が低いのもよく知られた話です。一般に低脂肪食している人は大丈夫でしょう。でも、セリ科の植物を多く食べていることがその理由の一つだと言うことは胸を張って言えるでしょう。
★★ ビルベリー(Bilberry/Vaccinium myrtillus コケモモ)と他の果実
 ビルベリーにはアントシアニンというコレステロールの抑制効果があることで知られる成分が含有しています。このハーブはまた血管を広げて血圧を抑える血管拡張剤でもあるのです。アントシアニンには心臓発作や脳梗塞の引き金になる血塊の形成を予防してくれる働きがあるのです。製薬企業がこのアントシアニンを研究するまでは、冠状動脈の諸症状を予防する効果のあるこれらの化合物の働きがわかりませんでした。でも、一つ解決しました。ビルベリーはそれらの成分を含むただ一つの果物ではないのです。
 この成分が豊富なものとしてはブラックベリー、チョークベリー、ボイズンベリー、ブラックカラント(クロフサスグリ)、ブルーベリー、チェリー、アカブドウ、レッドラズベリーなどがあります。今挙げたすべての果実に狭心症の治療と予防に役立つだろうと思います。
★★ ガーリック(Garlic/Allium sativum ニンニク)とオニオン(A. cepa タマネギ)
 このスパイシーなハーブは両方ともコレステロールと血圧を抑制し心臓疾患の治療に役立ち、また心臓発作の引き金になる血塊の形成を予防してくれるのです。
 ある研究によると、一かけのガーリックを日常的に食べているとコレステロールを9パーセントカットする効果があるそうです。コレステロール1パーセントを落とすごとに心臓発作のリスクを2パーセント抑える効果に匹敵するので、毎日の一かけで心臓発作の危険を18パーセントも低くしてくれるのです。オニオンにも同様の利益があるのに、あまり目立った評判がないのは残念なことです。
★★ ジンジャー(Ginger/Zingiber officinale ショウガ)
 米国農務省で同僚にジンジャーが抗狭心症効果の研究をするように説得して廻った後、ニューイングランドで活躍するハーバリストのポール・シュリック氏の著書「ありふれたスパイスと魔法の薬」にジンジャーは心臓発作を予防する効果が高いと書かれた部分を読んだのです。著者は本の中で、イスラエルのある心臓疾患専門病院では現在患者さんに、毎日粉末のジンジャーをティースプーンに半分勧めていると述べてあります。
 ジンジャーのもつ抗酸化作用には心血管を健全化する作用があるので、コレステロールが原因のダメージに備えるような働きをするようなのです。ジンジャーにはまた心臓の筋肉組織を増強するので薬用ジギタリス(強心剤)の様な働きも見せます。もしも私が狭心症だったら日常にジンジャーを取り入れ、料理にもじゃんじゃん使っているでしょう。
★★ ケーラ(Khella/ Ammi majus )
 1951年発行の英国医学ジャーナル誌に、ケーラの成分ケリンの抗狭心症の効果を大々的に掲載、これによると心臓を通る血液量を増加させる効果があるとのこと。ケリンと呼んだその成分は狭心症の治療に効果的で安全性が高いようです。一日たった30ミリグラムのケリンで効果があるそうですが、「生薬の百科事典」の共著の自然療法家のマイケル・マーレイ氏の他の著書「栄養と自然療法による治癒法」の中ではケリンが標準量(12%)含有するケーラのエキスを一日に250から300ミリグラム服用することを勧めています。ケーラの標準的なエキスを使う場合は、ラベルに記載されている説明を良く読むようにします。
★★ クズ(Kudzu/Pueraria lobata クズ、葛)
 中国での臨床研究ではクズの抗狭心症患者への効果が証明されているようです。ある研究で、71 人の人々が一日10から15グラムのクズ根茎のエキスを4週から22週のあいだ摂取してもらいました。この期間中、29人が非常に改善され、20人は改善が見られ22人はわずかか改善が見られないとの結果でした。
 クズのエキスは冠状動脈を拡張し、血流を増やして血圧を押し下げるのです。また、脈のリズムを安定化する働きもあります。クズ根の調合品には人に対しての悪影響は全く見られませんでした。
★★ パースレーン(Purslane /Portulaca oleracea スベリヒユ)
 酸化防止剤とは、体内の高い活性力の酸素分子であるフリーラジカルに依って起きるダメージから守る防御成分なのです。そしてそれらは心臓疾患を予防する決定的な役割を果たすものなのです。
 私がパースレーンをお勧めしたい理由は、十分な酸化防止剤に恵まれていることに加えて、オメガー3脂肪酸の最高の供給源でこれは心臓疾患の予防に役立つ成分が含有するのです。
★★ ウィロウ(Willow/Salix ヤナギ、各種)
 研究では低量のアスピリン(一日30ミリグラムから標準的錠剤の325ミリグラムまで)の摂取は血塊の形成を抑制することで心臓発作を予防する働きがあります。このことは狭心症の人たちに大きく関わっています。
 ウィロウの樹皮はハーブのアスピリンなのです。一日ウィロウ樹皮のお茶1,2杯で低量のアスピリンに等価で心臓発作の予防に効果のある量なのです。ちなみに、最新の研究ではアスピリンには(たぶんウィロウ樹皮も同様に)結腸ガンの予防に役立つことを示しています。だから試してみる理由は一つ以上あることになりますね。注意することは、あなたがアスピリンにアレルギーだったら、アスピリン様のハーブも同様に避けるべきでしょう。
★ イブニングプリムローズ(Evening primrose /Oenothera biennis メマツヨイグサ)
 プリムローズは血圧とコレステロールの両方を抑制する成分のガンマ・リノレン酸(GLA)のすばらしい供給源なのです。GLAは又、抗凝血効果があるのです。私の友人の栄養医学の専門家で地球化学者のC.ライ・ブロードハスト博士は、イブニング・プリムローズと亜麻の種子を一緒に摂取することを勧めています。
(フラックスの項を参照ください) ★ フラックス(Flax /Linum usitatissimum アマ)
 アマの種子にはアルファ・リノレン酸が豊富に含有し、この成分は心臓を保護する能力が高いと主張する多くの研究者がいます。
★ シーチャン・ラビッジ(Sichuan lovage/Ligusticum chuanxiong またはLevisticumofficinale 四川パセリ)
 このアジアのハーブには心臓発作の引き金になる血液の凝固形成を抑制する働きがあると、生薬学のアルバート・ラング博士やアーカンサスのハーバリストで写真家のスティーブン・フォスターが述べています。「身の回りの生薬百科」という本には、このハーブはアンゼリカ(ヨーロッパトウキ)と同様の成分が含有すると述べられています。これらの成分は冠状動脈を広げるので心臓への血流を増やす効果があるのです。このシーチャン・ラビッジが中国で狭心症やいろいろの心臓の状態に使われるのは無理もありませんね。