ご注意
まずこれをお読みの皆様にお願いですが、現在医療機関で治療を受けられている方は、必ずかかりつけの医者に相談の上お試しください。また、自己診断は禁物です。まず医療機関の診断を受けた上でご自分の体調を正しく把握してください。
 初期のアメリカ移住者は新世界にミルラ(没薬)を持ち込んで来ました。我々のほとんどがクリスマス物語の中で三人の賢者が赤ん坊のイエスにミルラを贈った寓話と関連づけるでしょうが、当時の移住者達は宗教的な目的は全くなかったのでした。「彼らはこのミルラを口囲潰瘍や口内炎の類の治療に使った」と植物学の古典の“医療植物”の共著者ウォルター・ルイスとセントルイスにあるワシントン大学の教授のエルビン・ルイスが述べています。口囲潰瘍は痛みの伴う噴火口状の潰瘍で唇や口唇内部に発生するものです。
 アフタ(白斑)性口内炎としても知られている口囲潰瘍は通常一週間程度で自然消失してしまいますが、時々再発する時もありこれは再発性アフタ性口内炎と呼ばれます。ざっと見積もってアメリカ人の20から50%の人たちが口囲潰瘍を経験しているようです。
民間療法:とるべき道は
 口囲潰瘍で医者にかかる人はそうたくさんいないようです。病院で処方する薬としては抗生物質かコルチステロイド剤で痛み止めと炎症を抑える薬物療法が中心となります。しかし、どちらもあまり効果が得られないようです。だから医者さえも伝統的な方法の氷を当てて痛みを抑えたり、温塩水で一日数回口腔内をうがいすることを勧める傾向にあるんです。
 医者は口囲潰瘍の引き金になったり悪化させる原因として控えた方がよい食べ物にアルコール、チューインガム、柑橘系果実、コーヒー、酪農製品、肉、パイナップル、香辛料、トマト、練り歯磨き、酢や酸性の食品を挙げています。(酸性食品がわからなかったら、なめてみて酸っぱいものは該当すると考えて良いでしょう。)
 あなたの持っているアレルギーの物質を避けるように勧めることもあります。我々人間は多少のアレルギーになるのを知っているのに“ちょっとだけなら”と甘やかしてしまうので、ちょっとだけ食べた“禁止”された食べ物が口囲潰瘍の原因になってしまうのです。
口囲潰瘍のための「緑の薬局」

 氷を使うことも塩水でうがいをすることも大賛成です。そして口囲潰瘍の引き金になるようなことは出来る限り避けることもとても良いアイデアだと思っています。私としてはハーブで出来ることを試して見たいものです。
"★"の数は効果の高さの指標です。
★★ ミルラ(Myrrh/Commiphora 没薬)
 ミルラは口囲潰瘍の民間療法以上の価値があるのです。ドイツのコミッションE(政府機関にハーブと健康についてアドバイスを与える科学者集団)は粉末のミルラには口やのどのへのマイルドな抗炎症作用があり、それはミルラに多く含有するタンニンの効果だと言うことを認めているのです。タンニン酸で知られるタンニンは多くの植物に含まれる成分で、食べ物の渋味として感じられます。広範なの抗バクテリア効果と抗ウィルス効果を併せ持ち、防腐作用があるので、バクテリア、真菌類、ウィルスまたはアレルギーが原因で起こる口内炎の治療に大変役に立つのです。
 粉末のミルラを使うには、(健康食品店で入手出来る)カプセルを開けて取り出した粉末のミルラを潰瘍部分に直接塗るだけでよいのです。
★★ ティー(Tea/ Camellia sinensis お茶)
 ミルラだけがタンニンの高含有ハーブではありません:一般的な飲料のティーもまたタンニンが豊富な供給源になります。ティーバッグをあなたの口囲潰瘍の患部に当ててみてください。またはタンニンの多く含む他のハーブで作ったお茶を作って試してみてください、たとえばベアベリー(コケモモ)、ユーカリ、セントジョーンワート、セージ、ラズベリー(キイチゴ)、ペパーミント、リコリス(カンゾウ)などです。
★ カンカールーツ(Cankerroot/Coptis groeulandica ミツバオウレン、他にキクバオウレン、セリバオウレンがある)
 この植物の名前は伝統的に口内炎の治療に使われて来たために付けられたのです。アメリカンインディアンや初期の入植者達も同様にのどや口の炎症の治療にこのカンカールーツをお茶にして使ったようです。ペノブスコット・インディアンズは、口囲潰瘍や単純疱疹(口唇ヘルペス)にこの植物の生の根をかみ砕いていました。オウレンの名でも知られるこの植物はたくさんの有効成分を含有しており、同様に治療の目的でもよく知られる植物としてはゴールデンシール(ナルコユリ)、ベアベリー(コケモモ)、オレゴングレープ(ヒイラギメギ)があります。
★ ゴールデンシール(Goldenseal/Hydrastis canadensis ナルコユリ)
 このハーブ、じつはアメリカインディアンがあらゆる種類の傷の治療に好んで使われていたのです。科学者がこのハーブを手に取ったとき、科学者達はインディアンが「神によって守られているのでは」と考えたほどでした。ゴールデンシールには傷や感染症の治療に必要なアストリンゼント(収れん剤)や殺菌作用のある化学物質を含有していることがわかったのです。
 口囲潰瘍用のうがい薬を作るには、乾燥したゴールデンシールティースプーン2杯をカップ一杯の沸騰した湯に入れてそのまま冷まします。一日3,4回うがいに使います。バーベリーやオレゴン・グレープにも同様の効果があるので治療効果が期待できます。
★ リコリス(Licorice/Glycyrrhiza glabra カンゾウ)
 ある研究でリコリスを口囲潰瘍に使った場合の治癒力を見たところ、うがい薬にリコリスをいれた場合、使った人の75%に症状の改善が見られと言うことでした。症状の軽減があった人たちを見ると、一日以内に改善の自覚があり、3日以内に完治したとのこと。この研究はメルビン・ワーバッハ博士(UCLA医学部精神医学科臨床医)の著書「各栄養素の病気への働き」という洞察力に満ちた医学書に載っています。タンニンに加えてリコリスには二種の別の成分:グリチルリチン酸とグリチルリジンという成分を含有し、潰瘍の治癒速度を速めてくれるのです。ここでお勧めするリコリスをお茶にすれば甘くさわやかに飲めるでしょう。
★ セージ(Sage/ Salvia officirralis ヤクヨウサルビア)
 このハーブにはタンニンの含有量は豊富なほうではないですが、ハーバリストたちはセージで作った濃いお茶には口やのどの炎症の治療にとても良いと勧めているのです。
 乾燥ハーブをティースプーン2杯、カップ一杯の沸騰したお湯に入れます。さめたところでガラガラとうがいします。この濃いお茶はたくさん飲まない方がよいでしょう。セージにはかなりの量のツジョン(thujone)を含有し、この成分を多量に摂取するとひきつけなどの原因になるのです。
 でも、セージは治療には大変優秀なハーブで、市販品の薄めのセージ茶は専門書の他のページでは治療効果のあるものとしてよく勧められているのです。「アスピリンは適量ならば大変良い薬なのに大量に摂取すると有害になる」と似ていますね。
★ ワイルドゼラニウム(Wild geranium/Geranium maculatum アメリカンクレインズビル)
 このごく普通の植物の根はアメリカインディアンや初期移住者がごく普通に使っていた医用植物なのです。たとえばチェロキー族では解放傷の止血用収れん剤や口内炎の治療用洗浄剤として使用されていました。口内炎の治療に広く民間治療薬として使われたので、私の考えるには高タンニンハーブはどれでも試す価値がありそうです。