ご注意
まずこれをお読みの皆様にお願いですが、現在医療機関で治療を受けられている方は、必ずかかりつけの医者に相談の上お試しください。また、自己診断は禁物です。まず医療機関の診断を受けた上でご自分の体調を正しく把握してください。
 25年前パナマで肝炎を患ってしまい、そのとき医者に言われたのは、「まず回復するまではアルコール類は禁止すること」でしたがパナマのラム酒は安くてうまかったせいもありかなり厳しい挑戦でした。酒はぴたりと止めました。それはそれでよかったのです。
 その当時、数多くの肝炎患者たちのための主な治療薬はなかったのです。しかし、ハーブ的な治療薬を使うことはできていました。私の息子が数年前肝炎になったとき、かかりつけの医者が息子へ与えたアドバイスは、昔パナマで私が受けたものと全く同じだったのです。しかし今回は私には薬用ハーブの知識が相当ありましたので、息子にミルク・シスルのカプセルを2瓶与えたのです。このミルク・シスルは、肝炎から肝硬変またテングダケの中毒までを含む肝臓の病気全般に効く私の最高にお勧めのハーブなんです。
肝臓のトラブル
 肝臓病の主要因は肝硬変を引き起こすアルコールだといえます。アルコール依存症患者はアメリカ国内でおよそ一千万人、毎年二十万人がこれが原因で死亡し、近年もっとも重要な健康障害を引き起こす原因になっています。アルコール中毒による肝臓障害が原因の死亡率は25歳から64歳までの男性の死因の第4位なのです。アルコールが原因の肝炎は肝臓疾患のなかで2番目になります。
 簡単に言うと肝臓の炎症を意味する肝炎とは一つのものではなく、たくさんの種類があるのです。急性肝炎(劇症肝炎ではなく、ほとんどが快癒する)や慢性肝炎(これは大変長期間かかるものです。急性肝炎と肝硬変の間の疾患領域といわれます)かよく知られています。肝炎はウィルスに依っても発症し、そのタイプにはA,B,C,Dがあり、新しい肝炎ウィルスが発見されるとさらにA.B.C.D.E・・・と文字が追加されるのです。
 アルコールや薬物治療(タイペノール剤のようなアセトアミノフェン薬剤)、ドライクリーニング用の薬剤(四塩化炭素など)の蒸気など工業化学薬品の過度の吸入によっても肝炎は引き起こされます。
 アメリカ国内では毎年いろいろな原因からくる肝炎患者が300,000人以上も発生しています。B型肝炎は特に油断できません。それはAIDSのように性的また血液によっても伝染していくのです。一年で約5,000人の人々がB型肝炎で死亡しており、もし治癒してものちに肝臓ガンのリスクがあるのです。幸いにも、現在はB型肝炎のワクチンがあります。しかし、ほかのタイプの肝炎に効くワクチンはまだないのが現状です。
肝臓のための「緑の処方箋」

 主流の治療薬、特に肝炎の治療薬としてこれと言ったものがない現在、医学界の権威者がハーブ療法という専門書にほとんど関心を持たないことに私は大いに失望を感じているんです。医学界の人がハーブ専門書を読めばミルク・シスルやほかの多くのハーブが肝臓病治療の役に立つことを学べるはずなんです。
"★"の数は効果の高さの指標です。
★★ キャロット(Carrot/Daucus carota ニンジン)
 インドの科学者たちはキャロットには、今のところ動物実験での結果ですが、著しく肝臓を守る能力があると言うことに気が付きました。肝細胞の破損が化学物質によって強制的に引き起こされた動物がキャロット・エキスの投与により回復が見られたのです。使われたエキスは数種の酵素により活性力を強化され、肝臓や他の臓器の解毒速度をスピードアップしたのです。
★★★ ダンデライアン(Dandelion/Taraxacum officinale たんぽぽ)
 「ダンデライアンの根は肝臓のための優れた食品のトップである」とハーブ薬理学者のダニエル・モウリー医学博士で「ハーブ療法とハーブ強壮剤療法の科学的考察」の著者が言っています。葉部は利尿を促進させ体内の余剰な水分を排出します。また重篤な肝機能障害の結果が皮膚の黄変を起こすことが知られていた黄疸にこのハーブの根部は何百年ものあいだ使われてきたのです。私としては葉部も花部も両方使うことをお勧めします。ダンデライアンの花はレシチンが豊富で、これはいろいろの肝臓の慢性症状に有効だと証明されている栄養素です。(訳者注:レシチンの豊富な食品には大豆食品や卵黄などがあります)
 ダンデライアンは食用植物なので、葉や花を蒸してほうれん草やサラダに向く野菜とともに食べるのが良いでしょう。にが味が苦手ならば、ハーブ専門店か健康食品店でカプセルかチンキ状のものが売られています。使うときはパッケージの「使用上の注意」を守ってください。
★★★ インディアン・アーモンド(Indian almond/tappa caTerminalia モモタマナ、コバテイシ(枯葉手樹))
 このハーブのエキスには、動物実験ですが化学物質による肝臓障害を防ぐ働きが認められています。残念ながらインディアン・アーモンドはふつうのアーモンドと違いアメリカ国内では入手困難なようですが、いつか市場に出回ってほしいものです。パブアニューギニアやフロリダ、ハワイなどの熱帯地方の沿岸に野生しています。
★★★ミルクシスル(Milk thistle/Silybum marianum オオアザミ)
 ミルクシスルは少なくとも二千年に亘って肝臓病の治療に使われてきました。研究調査の結果ではこの種子の成分がアルコールや肝炎による肝臓への攻撃から守ってくれ、また破損した肝細胞の再生を促してくれるのです。ドイツのコミッションE(ドイツ政府が認めた機関でハーブの安全性と有効性を判定する科学者グループ)はこのミルクシスルの種子や種子のエキスには肝硬変や慢性の肝炎の治療効果があると認定しています。ほかの研究では、ミルクシスルのシルマリンという成分が、ドライクリーニングにも使われる四塩化炭素のような種々の産業用毒物から肝臓をプロテクトする働きが大きいことがわかっています。たとえあなたが肝臓障害や肝臓病がなくても、ミルクシスルは肝機能を向上し、肝臓への毒素を取り除き健康を増進してくれるので価値は大きいでしょう。
 このミルクシスルのカプセルは健康食品店やハーブショップで買い求めることも可能でしょう。パッケージに印刷された使用上の注意に従って使ってください。もしもあなたが、ガーデニング派ならば種から育ててみましょう。このハーブのさらに医学的な価値に加えて、この種子をローストして挽いたものはコーヒーの替わりにすることができるのです。(ミルクシスルはコーヒーの代用になるチコリと同じキク科なのです)
 この国で消費されるアルコールの弊害に対して、私はおもしろ半分にビール豆と称したおつまみを売って小金を稼ぐときがあるのです、このビール豆(訳者注:BeerBeansと言う単語は米国ではエダマメを指すことが多いようです。)はローストしたミルクシスルの種子、大豆(アルコールの欲求を抑制すると思われている)とイチョウの実(アルコールの体内代謝を早める事がわかっている)を混ぜたものなんです。これをローストして大酒飲みの友人たちに売りつけているんです。
★★★ シサンドラ(Schisandra/Schisandra chiuellLsis チョウセンゴミシ【五味子】)
 中国で男性用強壮として広く使われており、このハーブはまた肝臓の機能を高める効果も高いと天然産物の薬効を調べる薬理学者のアルバート・ラング博士が述べており、またこのエキスはウィルス性の肝炎や肝臓の病気の治療に有効であると認めています。種子には10種以上の肝臓を保護する成分を含有しています。私には肝臓の不具合に効く最高のハーブがミルクシスルからシサンドラに入れ替わってもいいんじゃないかと思っているくらいなのです。
 このハーブの乾燥した果実はハーブショップか健康食品店で求めることができます。中国での使われ方は、肝炎が鎮静したあと一ヶ月位の間、これをテーブルスプーン1杯から7杯程度を毎日摂るそうです。
訳者注:五味子の名は、味に五味があると言うことからつけられたようです。
クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、単糖酸、脂肪油中にシザンドリン、精油中にセスキテルペン、またアミノ酸のアルギニンなどを含みます。焼酎に漬けて五味子酒として飲みます。五味子300g、グラニュー糖300g、ホワイトリカー1.8Lに漬け、2ヶ月後にこして完成。一日30mlを限度に就寝前に飲みます。
★★★ タマリンド(Tamarind/Tamarindus indica )
 ラテンアメリカ地方で、タマリンド・ジュースは強い酒の追い水の替わりに飲むようです。二日酔いの予防に良いそうです。これを試してみる機会があって、「役に立つかな?」と感じました。この感じは、タマリンドが肝臓を保護するかどうか私の感じを強くしました。その感じとは少なくともタマリンドのエキスを動物に使った実験で、肝臓に悪影響のある化学物質による肝臓のダメージを防ぐ効果が部分的にではありますが見られた、という事に依るものでした。
 種子の周りの甘い果肉は医薬用よりも嗜好品として甘味飲料の材料にされています。もしそれが利用できれば、一日コップ2杯は飲みたいですね。でも、今のところこの果実はラテンアメリカのごく一部でドライフルーツとして見られるだけです。このフルーツを探すのも楽しみなものですね。
★★ チコリ(Chicory/Cichorium intybus キクニガナ)
 医薬品に含まれるアセトアミノフェンを多量に服用することは肝臓にとって有害で、異常な量を服用すると致死量に達することがあります。
(訳者注:ただし、通常の服用量の時は比較的安全な鎮痛・解熱作用として使えます。)
 ある研究で、致死量のアセトアミノフェンを投与されたマウスのうち、チコリのエキスを与えられたマウスの70%が生き残ったそうです。当然かもしれませんね、チコリはミルクシスルの近縁種なのです。
 家庭でできる療法に、このチコリの根を掘り出し焼き焦がしたものを粉砕してチコリ・コーヒーを作って一日2杯から4杯ほど飲むのです。チコリはカフェインの無いすてきなコーヒーの代用品になります。でも、こんなやっかいな作業をする必要もありません。このハーブの根部のエキスの標準的な商品がハーブショップや健康食品店などに行けば入手できるでしょう。
★★ チャイニーズ・アンゼリカ(Chinese angelica/ Angelica sinensis トウキ)
 Dang-quai と言う名で知られる中国ハーブは東洋では女性用保険薬として珍重されています。これもまた肝臓を保護してくれて、より多くの酸素を吸収・活用する働きがあるようです。中国のハーブ療法師は肝硬変の治療に多用するようです。
 通常の服用量は一日2杯から6杯をお茶にして飲んだり、チンキやカプセル状のものを1ヶ月をめどに飲むようです。アメリカ国内でもこのチャイニーズ・アンゼリカを健康食品店でも見つけられるようになってきました。(このハーブは妊娠中は摂らないようにご注意ください。)
★★ ジャワ・ウコン(Javanese turmeric/Curcuma xanthorrhiza ガジュツ)
 アジアの民間伝承に、このハーブは肝臓に関する状況に良く注目されてきて、とりわけ胆石や黄疸に効果があるそうです。台湾人科学者はその理由にこの黄色い根部のエキスには肝臓を守る力が著しく高いと考えています。このハーブの入手は困難ですが、インドネシア産やアジアの他の地域のものでもあなたの住まいの近くで入手できるもので良いでしょう。
 標準的な服用法は1ヶ月をめどに毎日ティースプーン5杯までを使うこと。食品としてでも、お茶としてでも良いでしょう。
★★ リコリス(Licorice/Glycyrrhiza glabra カンゾウ)
 リコリスの根部が持つ活性物質は多くの化学物質の害による肝細胞の損傷を防止し、特に日本では肝硬変や慢性の肝炎の治療に活躍しています。日本ではこれを点滴などで注入しますが、これは私がお薦めしたくない方法なのです。ロシアの研究になりますが、リコリスやペパーミント、ローズ、スティンギングネトル、タンジー(ヨモギギク)を混ぜ合わせたハーブには動物実験の結果ですが、肝細胞の細胞膜を強化安定化する効果があるので、肝臓障害から動物を守ることができたそうなのです。
 私の家の近くに住む著名な自然療法家ジョセフ・ピッゾーノ氏はシアトルのバスチール大学の教授で「生薬医療のテキストブック」と言う本のマイケル・マレー氏と共著者でもありますが、氏は良く管理された臨床実験でウィルス性の肝炎の治療にグリチルリジンがきわめて効果的な結果を得ることができたと述べております。
 標準的に商品化されたエキスは健康食品店で入手できるでしょう。しかし、使用上の注意を良く読んでください。
★ ボトル・ガード(Bottle gourd/Lagenaria siceraria ユウガオ)
 北カリフォルニア大学の科学者達の実験で、動物実験の結果ではビタミンB群コリンの不足は肝臓障害の原因になり、肝臓ガンへ発展することもある事がわかりました。コリンが人間の肝臓を癒す効果があるかはまだ不明ですが、この栄養分が害になることはないようです。私の資料によると、コリンのもっとも良い供給源はボトル・ガードの乾燥状態の重量比で1.6%も含有しているのです。このボトル・ガードはすりつぶして食べるのがよいでしょう。もしもこのハーブが入手困難であれば、ご自分で栽培することもできます。コリンの含有率が高いのはフェヌグリーク(コノハ)の葉、ナズナ、ホアハウンド(ニガハッカ)、チョウセンニンジン、ササゲ、エンドウマメ、ヘチマ、レンズマメ、アンゼリカ(トウキ)などが挙げられます。
★ ジンジャー(Ginger/Zingiber officinale ショウガ)
 分子生物学者のステファン・ベックストーム博士の研究によると、ジンジャーには肝臓を保護、強化する8種類の成分を含有することがわかっています。私としては肝炎の治療に有効とは言いかねますが、あなたが私と同じようにジンジャーの愛好者ならば料理やお茶に使うほどに多少は肝臓のためになると思っています。
★ ティー(Tea/Camellia sinensis チャ)
 ティーは伝染性の肝炎の治療に臨床的に効果があるとレング博士とアーカンソー州在住のハーブ専門家スティーブン・フォスターと共著の「天然素材百科事典」のなかで述べています。もし私が肝炎にかかったら、毎日カップ3,4杯飲むようにします。
★ ターメリック(Turmeric/Curcuma longa ウコン)
 カレーに見られるこのスパイスは肝臓を保護する成分が幾つか含有しています。肝炎にかかったならば、料理にもっとウコンを利用すると良いでしょう。
付録:ハーブ活用法
肝臓を守るサラダ
 サラダは肝臓を守る材料がふんだんに使える料理ではないでしょうか。サラダを作るならば、ミルクシスルの葉やニンジン、ダンデリオン(タンポポ)の花を加えてください。ドレッシングにはジンジャーとターメリックを是非使ってください。
肝臓茶をどうぞ・・・
 肝臓の改善に効果があると言われるハーブでミックス茶を作りましょう。お好みに応じてリコリス、ダンデリオン、チコリ、ターメリック、ジンジャーの中から選んでください。お好きでしたら更にアニス、キャラウェイ、セロリの種子、ディル、クローブ、フェンネル、ペパーミント、ローズマリー、バニラビーンなど使うとバラエティに富んだお茶が楽しめますね。
 混ぜたドライハーブをジャーに入れて保存しておき、ハーブティーを飲みたいときには手軽に作れるようにしておきましょう。