ご注意
まずこれをお読みの皆様にお願いですが、現在医療機関で治療を受けられている方は、必ずかかりつけの医者に相談の上お試しください。また、自己診断は禁物です。まず医療機関の診断を受けた上でご自分の体調を正しく把握してください。
 およそ30年ほど前に家族全員でパナマに滞在し、とてもよい時を過ごしました。パナマの市内での滞在中に、私は熱帯雨林を歩き回ったり諸島で過ごしたものです。そういう野性的な生活から帰って来てこの旅行の最後の締めくくりに家族全員でロス・クンブレスに住む有名な人類学者レイナ・トルレス・デ・アラウスさんのお宅に訪れて素敵なディナーを頂戴しました。食事のあと、彼女はコーヒーではなくカモマイル茶を勧めてくれました。実を言うとそのときには食事のあとにこの素晴らしい飲み物を勧める彼女のセンスにはあまりうれしくなかったのです。今ではその価値がよくわかりますけれどね。
 カモマイルはハーバリスト達には駆風剤(腸内ガスを排出する)と呼ばれ、胃腸を落ち着かせたり特に消化不良には大変効果のあるものなのです。さらに鎮静剤の効果もありますね。ラテンアメリカでは、就寝前にカモマイル・ティーを飲んで熟睡の助けにする人も多いようです。
消化不良のための「緑の薬局」

 お腹のトラブルを解消するためのハーブは数百種もあります。ここでは私が特にお勧めするものを紹介します。
"★"の数は効果の高さの指標です。
★★★カモマイル(Camomile/ Matricaria recutita カミツレ、カモミール)
 コミッションEというハーブの安全性と薬効性を認証するドイツの科学者グループは、このカモマイルには消化不良を含む多くの胃腸の不具合を解消する効果が大きいと認めています。ツーソンにあるアリゾナ大学医学部の教授であり「健康と生薬」の著者アンドリュー・ウェイル氏は「胃腸をこわした時に家庭に置いていて欲しい最も薬効の高いハーブはカモマイルとペパーミントのお茶です。」と言っています。
 私個人としてはペパーミントが好きですが、でも両方とも効果があります。カモマイル茶を飲んでもとても良いものですが、チンキ(濃縮剤)はより効果的でしょう。カモマイル茶はそのエッセンシャルオイルの15%程度の成分を抽出しますが、チンキでは100%アルコールを使うので遙かに多い成分を抽出できます。
★★★ ペパーミント(Peppermint/ Mentha piperita)
 私を含めたほとんどのハーバリスト達はペパーミントの持つ消化不良の薬効に多大な敬意を持っています。
 私は1990年以来より頻繁にペパーミントを取り扱う必要性に迫られました、というのはFDA(米国食品医薬品局)はペパーミントは胃の不調には効果が薄いとの結果を私に「ペパーミントは消化不良には良くないようだ。」との宣告を知らせてきたのです。これはペパーミントが役立たずという意味ではありません。あきらかに、FDAの評価は役に立たないと言うことを自ら暴露しているのです。コミッションEはペパーミント・ティーを消化不良の治療に推奨しているのです。FDAの宣告とコミッションEの推奨のどちらかの選択を迫られれば、私は迷わずドイツの推奨の方を選ぶでしょう。ドイツ人は彼らの民間療法として研究をして本当に効果のあることを良く知っているのです。
 ペパーミント・ティーは良く効きますが、生粋のユダヤ人は使用を避けるようです。私はむしろミント・ジュレップ(ウィスキーに砂糖・ハッカなどを加えた清涼飲料水)も使いますが、こちらの方がより効果が高いようです。インディアナ州のプルド大学で生薬の研究をしている薬学部の学部長で名誉博士のバロ・タイラー氏はペパーミントや他のミント類に含有する駆風効果のあるオイル成分は比較的水に溶けにくい性質があると述べています。だから結果としてミントティーは植物の持つ健胃成分をすべて利用できているとは言えないのです。それはそれなりに十分な効果はあるのですが、アルコールを使ったペパーミントのチンキの方が有効成分がより多く含有するのでより高い効果が期待できるでしょう。
 もしもあなたが何かの理由でアルコールを含むジュレップを飲みたくなかったら、変わりに市販のペパーミントのチンキ状のものを使うと良いでしょう。その場合はパッケージの説明書を良く読んで下さい。
★★アンゼリカ(Angelica/ Angelica archangelica ヨーロッパトウキ、トウキ)
 アンゼリカの根はコミッションEによると消化不良やゆるい胃の痙攣、食欲不振の治療に大変良いものです。
 一日の服用量は熱湯カップ一杯に対して乾燥アンゼリカをティースプーン2,3杯を使ってお茶を作るか、チンキだったらティースプーン1杯までを限度に使います。
★★ジンジャー(Ginger/ Zingiber officinale ショウガ)
 乗り物酔いへのジンジャーの薬効は十分に証明されてきていますが、消化不良についてもジンジャー約2グラム(ティースプーン1杯)を使ったお茶で改善されるとコミッションEも勧めている位なので驚くには当たりません。ジンジャーには成分としてジンゲオールやショーガオールを含み整腸作用だけでなく腸の波状筋のぜんどう運動を活発にして腸内の食べ物を滞留させず消化を助けるのです。
★★マジョラム(Marjoram/ Origlanum onites ポット・マジョラム、フランスマヨナラ)
 イギリス人は消化を助けるためにマジョラムの葉を挟んだサンドイッチを食べたり、マジョラム茶を薄めて飲ませ幼児の腹痛の治療に使っています。マジョラムはアロマ(芳香)性のミントで消化不良への薬効はペパーミントによく似ていますね。
★コリアンダー( Coriandrum sativum コエンドロ)
 コリアンダーが消化不良を鎮める事は当然のことなのです:コリアンダーから抽出したエッセンシャルオイルには駆ガス作用、防腐作用、殺菌作用、防かび作用や筋肉をリラックスさせる効果があるのです。
 伝統的なハーバリストはコリアンダーを腹痛を和らげたり便通を促進するハーブとしてバックソーン、カスカラ(クロウメモドキ)、ルバーブ(ダイオウ)やセンナなどと同等の評価を与えています。
 アマゾンの住民達は含有成分がほぼ同じのワイルド・コリアンダー(Eryngiumfoetidum エリンジウム)を主食のダイズに混ぜていて、おそらくダイズが発生する腸内ガスを排出させる助けをするものと考えられています。
★パパヤ( Papaya /Carica Papaya パパイヤ)とパイナップル( Ananas comosus )
 これら両方のフルーツにはタンパク質を分解する酵素が含まれています。自然療法士やジュース健康法を支持する人たちや医学人類学者で「フルーツ、野菜とハーブ百科事典」の著者ジョン・ハイネマン博士はパパイヤやパイナップルのジュースは消化不良の治療にとても効くと説いています。
もしも彼らの主張が正しければ食事のあとにキウイフルーツかイチジクの実のような蛋白質分解酵素の多く含有するフルーツも私たちにとって役に立つでしょう。私が慢性の消化不良患者だったらこんなフルーツを頻繁に食べるのも良いかも知れませんね。
★レッド・ペッパー(Red pepper/ Capsicum 多種ありトウガラシ)
 アメリカ人は辛いスパイスはお腹をこわす原因だと思っている人が多いようです。でも、世界の多くの人々は、レッド・ペッパーのような辛みのあるスパイスは胃腸の鎮静効果が高いことを知っているのです。レッド・ペッパーは消化を助けてくれるのです。
★ ルイボス(Rooibos/Aspalathus linearis ルーイボッシュ)
 南アフリカの医者は幼児の腹痛や消化不良におだやかな効き目のあるルイボス茶を良く勧めると、植物学者のジュリア・モートン教授が述べています(彼女は1996年に交通事故で亡くなりましたが、「中部アメリカの医薬植物」などこの分野では大変価値の高い本を出版している著者。医薬植物の研究の分野では彼女の死は大きな損失でした。)残念ながらアメリカではルイボスはほとんど出回っていません。
★ 腸内ガスを排除する効果のあるハーブ
 どちらかというと駆ガス効果のあるハーブはとても多いです。私の資料では、この項で述べた植物も全部含めて500種以上のハーブがあります。これらハーブのほとんどは何らかの研究がなされています。
 他に含まれているハーブには、アグリモニー(セイヨウキンミズヒキ)、オールスパイス(ヒャクミコショウ)、リンゴ、バジル、ベイ(ローレル)、ビーバーム(beebalm)、バックウィート(ソバ)、バードック(ゴボウ)、キャラウェイ(ヒメウイキョウ)、カルダモン(ショウズク)、キャットニップ(イヌハッカ)、セロリ、チャービル、チャイブス(ニラ、エゾネギ)、クローブ(チョウジ)、コリアンダー(コエンドロ)、クミン、ディル、フェンネル(ウイキョウ)、ガーリック(ニンニク)、ホアハウンド(ニガハッカ)、ヒソップ(ヤナギハッカ)、レモン・バーム(セイヨウヤマハッカ、メリッサ)、レモングラス、ラビッジ、マジョラム(マヨナラ)、ナツメッグ(ニクズク)、オニオン(タマネギ)、オレガノ(ハナハッカ)、パセリ、パースニップ、ペニーロイヤル(ミント)、ローズマリー、セージ、セイボリー(キダチハッカ)、タラゴン、ティー、タイム、ターメリック、バニラ、ヤーローなどがあげられます。消化不良の不快感をこれらのハーブで解消して下さい。
★ エッセンシャル・オイルとして分類されるもの
 芳香療法士(アロマセラピスト)は消化不良の症状の時などに駆ガス効果のあるオイルを勧めるようです。効果のあるオイルにはアニシード(アニス)、バジル、ベルガモット、カモマイル、シナモン、クローブ、コリアンダー、フェンネル、ガーリック、ジンジャー、ヒソップ、ジュニパー、ラベンダー、レモン、レモングラス、オニオン、ペパーミント、ローズマリー、セージ、セイボリー、タラゴン、タイムが使われることが多いです。
 それらのエッセンスオイルは原液では飲用出来ません。ほんの少しの量でも致命的なことになります。エッセンシャルオイルは外用だけにして下さい。まれに希釈したものをうがいなどにも使いますが、詳しい方の指導のもとにご使
消化不良や胃弱の方
 あなたが慢性的な消化不良のような胃弱だったらミランタ(米国の制酸剤商品名)よりも味の良い飲み薬を作って上げましょう。レシピーといわれる様なものはないのですが、そのときに持ち合わせたハーブをミックスしています。ここで私が手にはいるのは:アンゼリカ、アニス、カモマイル、コリアンダー、フェンネル、ジンジャー、ローズマリー、ターメリックを少量とミント、特にマジョラムとペパーミントがあれば良いんですがこれをちょっと多めに用意しました。きっちり守らなくてもあなたの舌にあわせて組み合わせを替えてももちろんOKです。これらのハーブをミネラルウォーターカップ一杯にウォッカを1ショット混ぜた液に浸して冷蔵庫で一晩置きます。できあがったらお茶として飲んでも良いし、パイナップルジュースに加えても良いです。